前回第11話のお話
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
アドレスは射撃と似ている
GD アドレスは自然体という話のとき、体の各部の筋肉を均等に保って、関節をロックさせないことが大切と話していました。それは、体のどこかを動かし続けることで自然体を保てるということでしょうか?
湯原 はい。五輪種目のライフル競技で射撃手が標的に向かって撃つとき、体が静止すると銃口がブレて、かえって照準が合わせにくくなってしまうという話を聞いたことがあります。首を含めて背骨には30数個の骨があり、それが微細な動きをし続けることでタイミングを合わせて、標的に向かって引き金を引<ことができるのです。
GD 射撃というと静止しているイメージがありますが、動いているほうがいいのですね。
アドレスは体のどこかが動いているべき
湯原 そうです。私が考えるに、人間の体にとって止まっている状態とは実は不自然なんです。だから、アドレスの自然体を保っためには、体のどこかが常に動いているほうがいい。固まらないで常にどこかが動いているから、アドレスの自然体を維持でき、スッとテークバックに入れるんです。
GD 武道の達人のように、いかようにでも動き出せる自然体のアドレスは、体を静止させて固まってしまったらできないんですね。
湯原 ただし、人はそれぞれ体型が違うし、その人固有のリズムとかテンポも違う。さらにグリップの握り方も違います。だから、どこをどのように動かせばスムーズにテークバックに入れるかも違ってくるんです。つまり、感覚が人それぞれ違うのですから、自分にとって何が最適なのかを常に探る必要がありますね。
GD ガルシアのリグリップに関しては、いろいろな批判がありましたけど、少なくともリズミカルな動きを促すものではありました。
スウィングの妨げになる動きは✖
湯原 筋肉を動かす上でリズムだとかタイミングだとかはものすごく重要なものです。だから、自分の体内リズムと合ったテークバックの始動のきっかけは、人それぞれ違っていいんです。しかし、リズミカルに動いていればいいわけではありません。自分が意図しているスウィングの妨げになる動きを取り人れないようにする必要もあります。
GD 意図しているスウィングの妨げとは?
湯原 先ほども言った(第11話で説明)ように、フォワードプレスをしてフェース面の向きが変わってしまったとか。二クラスのマネをして、あごを右に向けたためにスウィング軸がズレてしまったとか。そういうことです。
GD 要するに、アドレスしたところに、インパクトできちんと戻れるような動きでなければ意味がないということですね。
湯原 はい。自分の感覚ではないものをマネして取り入れると、何かしらのズレが生じる可能性は非常に高いですね。ゴルフのスウィングで大切なことは、いかにインパクトするかなので、どのように上げるかはあまり厳密に考えなくてもいいと思います。
GD そういえば以前、「アドレスせずにトップからいきなりスウィングをスタートさせてもいい」とおっしゃっていましたね。
湯原 極論ですけどね(笑)。へッドが走って叩けるインパクトになればいいわけですから。どう上げるかばかり考えていると、何のためにそうするのか、目的意識がおろそかになってしまう恐れがあるんです。テークバックのためのテークバックになってしまうのが一番よくないと思っています。
GD あくまでも、自分が考える理想的なボールヒットをするための過程であることを忘れてはいけないと。
トップで左腕を伸ばすことが目的ではない
湯原 ときどきアマチュアの方から「プロはトップで左腕が伸びていていいですね」と言われることがあるんですよ。彼らにとっては、そうやって左腕が伸びることが理想なんでしょうね。
湯原 でも、私は左腕を伸ばすことは目的ではなくて、球に対してどれぐらいヘッドを加速させるかのほうが重要なんです。だから実は、私の左腕はトップで伸び切っていなくて、少し伸び代を残しているんです。その伸び代を使うのがインパクトなんです。
GD 伸び代があるからインパク卜でヘッドが走るんですね。
湯原 自然体のアドレスから、体を動かしつつ、スムーズにテークバックを始動する。これらはすべて、筋肉をリラックスさせて、ヘッドが走るインパクトを迎えるためのものなんです。
GD そこに、リズムとタイミングが加味されればいいということですね。
湯原 どこをどのようにどんなリズムで動かすか、皆さんのスタンダードを探ってください。
週刊GD2013年より