前回、第16話のお話
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
とる砂の量をイメージする
GD バンカーで、アマチュアがプロのようにフェースを開いて構えられないのは「打とうとするショットのイメージができていないから」とおっしゃっていましたね。「アマチュアは打ち方ばかりを優先している」とも。
湯原 ひと口にハンカーショットと言っても、さまざまなケースがありますよね。砂質や砂の量の違いだけでなく、アゴがあるかないか、グリーンまでの距離、アップヒルにダウンヒル……。いろいろな状況が考えられます。
湯原 アマチュアはそれらをぜんぶ大根切りのように左ひじを引く打ち方だけで何とかしようとするから、ヘッドスピードが上がらないんです。ヘッドスピードが遅いと、じゅうぶんな砂の量が取れずに失敗するんですよ。
GD よくバンカーのレッスンでは「アウトサイドイン軌道で、ボールの2~3センチ後ろにヘッドを打ち込め」という定番があります。この教えにも原因がありそうですね。
湯原 まずは、さまざまなケースがあるのだから、ひとつの打ちだけで対応するのは無理だということを認識してください。状況に応じて、どれぐらいの量の砂を、どう取ればいいのかイメージするんです。
湯原 そのイメージができたら、58度のSWのロフトを62度ぐらいに寝かせたほうがいいのか、54度ぐらいに立てたほうがいいか、そういう想像力を働かせなければなりません。画一的な打ち方に囚われていると、ボールをどういう形で狙ったところに落とすのか、プランの立て方がわからなくなってしまうのです。
ロフトを寝かせる
![画像: 状況に合わせてロフトを寝かせたりする](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/10/08/ec6b3fff7a8e68c43e25a60b391b35feb17c36be_xlarge.jpg)
状況に合わせてロフトを寝かせたりする
ロフトを立てる
![画像: とる砂の量をイメージする](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/10/08/a595c62a81e86c56f3892b4cf728c5320f7d075a_xlarge.jpg)
GD 「ボールの後ろを打ち込む」という教えについてプロゴルファーに聞いてみると、ほとんどのプロが「どこに打ち込むかなんて考えたことがない」と答えていました。
湯原 ええ、私もそれは考えませんね。要は慣れです。プロは状況を見て、球筋のイメージが浮かべば瞬時に体が反応するぐらい練習量が豊富だから、いちいちどこに打ち込むかなんて考えていないんです。転がすのか、スピンをかけるのか。それが決まったら、どれぐらいのスピードでクラブを入れるのかが決まります。それに対して、どこに打ち込むのかは関係ないんですよ。
GD アマチュアも少ない経験のなかで、どんな球筋で、高さで、どこに落として転がすのか、しっかりイメージする習慣をつけることが大切なようですね。さきほど、ヘッドスピードと言っていましたが、バンカーショッ卜では重要なのでしょうか。
湯原 バンカーショットはヘッドスピードがないとダメです。ボールを直接打たない、つまり、ボールとクラブフェースとの間に砂があるので、その抵抗のぶんだけヘッドスピードが必要になります。女性にバンカーショットが苦手な人が多いのは、そのせいです。
どこにヘッドを入れるかより、どう入れるかが大事
GD 砂ごとボールを運ぶとか、砂を飛ばすとか、砂を爆発させるとか、バンカーショットの表現はいろいろありますが、湯原プロはどんな感じで打っているんですか?
湯原 私は「砂の摩擦を使ってジョリジョリ」という感じです。普通のアプローチではフェースの溝でボールにスピンをかけるんですけど、バンカーの場合は、砂の抵抗でボールを回転させるから、ジョリジョリ感なんです。間の砂が薄ければ薄いほど摩擦が強くなってスピン量も増えるイメージです。反対に、砂の量が多くなるほどスピン量は減って、落ちてから転がります。
![画像: フェースとボール間の砂のジョリジョリでスピンをかけるイメージが湯原流。砂の量によってスピン量をコントロールしている](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/10/08/32856dbbfb7c29362a09cf0840552de0cde1b22d_xlarge.jpg)
フェースとボール間の砂のジョリジョリでスピンをかけるイメージが湯原流。砂の量によってスピン量をコントロールしている
GD 取る砂の厚みで転がり方が変わるのなら、やっぱりプロもヘッドを打ち込む場所を考えているのではないですか?
湯原 いや、考えません。考えるのは、どんなスピードで砂を切っていくか、です。もしくは叩いて砂ごと爆発させるかを考えます。
GD そうすると、極端に言えばボールの手前10センチぐらいから入れることもあるんですか。
湯原 ありますよ。ものすごくフカフカの砂だったら、スウィング全体のスピードを遅く、入射角も低くして、ドンブリ1杯ぶんの砂を取るイメージで、球をボワーンと上げていくんです。
GD それもやっばり、この辺りから打ち込むという意識はない?
湯原 いつも同じライではないので、決まった感覚はないんです。この球のイメージなら、だいたいこの辺からこの辺までに、ヘッドをこんなふうに通そうと思っているだけで、実際に打ったら結果的にそれがボールの10センチ手前だった、というだけです。
湯原 そういうのは、自分のなかにプログラムされていると言うほか、ないんですよ。どこにヘッドを入れるかよりも、どうヘッドを入れるかのほうが大事なんです。
湯原 プロアマなどでアマチュアの方に教えるときは、「板チョコみたいなものの上にボールが乗っていて、その板チョコをはぎ取るイメージで」と言っています。「ここから打ち込め」とは決して教えません。状況に合わせたショットをしないと、自分が意図した球にならないからです。
ラウンドでの経験値がバンカーを上手くする
湯原 湯原じつはこのバンカーショットの感覚って、深いラフの打ち方とほとんど同じなんですよ。
GD えっ、バンカーもラフも同じ技術で対応できるんですか。
湯原 ええ、打つ感覚は一緒なんです。ただし、抵抗の大きさによって入射角は変えないといけないことは知っておきましょう。ラフより砂のほうが抵抗が少ないので、入射角は浅くなります。どちらかと言うと、バンカーのほうがやさしいです。
バンカーショット
![画像1: 【通勤GD】迷ったとき、ユハラに帰れ! Vol.17 バンカーこそ弾道イメージ ゴルフダイジェストWEB](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2019/10/08/439981d555d8f913adfeb36b0617030fd01daa4a_xlarge.jpg)
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GD やっぱりプロゴルファーはバンカーのほうがやさしいんですね。アマチュアはどちらかというと、ラフよりバンカーのほうが難しいと思っている人が多いと思います。
湯原 ラフには根っ子があるでしょ。その太さがどれぐらいかによって抵抗は大き<変わるけれど、見えないので抵抗の大きさが予想しづらいんです。それに、ボールが地面まで潜っているのか、ラフの途中で浮いているのかも、見た目だけではなかなか判断できません。順目と逆目でも対応の仕方が違います。
ラフショット
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GD ラフの話が出たついでに、順目と逆目の心構えを教えてください。
湯原 順目だったらヘッドは滑っていきやすいし、逆目だったら引っかかって止まりやすい。それぞれ、どれぐらいの運動最が必要なのかをライを見て察知しなければいけません。思った以上にスーッと抜けていくときもあるし、根っ子が強くて止まってしまうこともあります。だから、飛びすぎたり、飛ばなかったり、想像が及ばない結果になることが多いんです。だからなるべくラフは避けたいんですよ。
GD 確かにトーナメント中継を見ていて、世界のトップ10に入るプロでも、ラフでダルマ落としみたいなミスをする場面がありますね。
湯原 深いラフはプロでさえ突拍子もないショットが出るものなんです。それに比べれば、バンカーは砂が締まっているとか、フカフ力だとかいろいろあっても、その場所に限って言えば均一だから、ヘッドの抜け方などがイメージできるんです。
GD アマチュアは、なかなかバンカーの練習ができないのも、イメージが浮かびにくい一因ですね。
湯原 ですから、プレー中もバンカーに入ったら、成功しても失敗しても、その経験を蓄積することが大切です。雨で重くなった砂、細かい砂、荒い砂、そのときどういう打ち方をしたのか。その結果はどうなったかを覚えておくのです。そういう状況の違いは、ラウンドしてこそわかるものですから。
GD バンカー攻略のポイントは、砂質の違いを知ることと言えそうですね。
湯原 砂質で抵抗の大きさがだいたい判断できます。それを踏まえたうえで、どんな高さでどこまで打つのか、イメージするようにしましょう。あとはできるだけ経験を積んで、イメージを形にするだけです。
週刊GD2013年より
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