前回、第19話のお話
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
番手が長くなるにつれてバウンスは小さくなる
湯原 まず、バウンスがあるのはウェッジだけじゃありません。バウンスはロングアイアンほど小さくて、短いクラブほど大きくなる傾向があります。
GD 確かに、メーカーによってはロングアイアンのバウンスはマイナス(スクープソール)になっているところもありますね。
湯原 クラブが鋭角に入るか、鈍角に人るかでバウンスの働きは違ってきます。そしてバウンスというものは、ヘッドが地面に当たった瞬間にフェースの向きをある程度修正してくれる役割があるんです。だけど、地面に対してフラッ卜に人れる(ヘッド軌道がゆるやか)場合は、バウンスが大きいとボールの手前で地面に当たってクラブが跳ねてしまうので、逆に邪魔になってしまうんです。
GD だから、比較的鋭角な軌道になる短いクラブはバウンスが大きくて、番手が長くなるにつれてバウンスが小さくなってくるんですね。
湯原 大ざっぱに言えば、打ち込んで打つタイプの人は、バウンスが大きめのほうがいいし、クラブを払うように球を拾っていく人は、バウンスの影響を受けにくいので、小さめのバウンスを好む傾向があります。
7Iで比較 同じ番手でもソールのカタチはこんなに違うんだ
アマチュアにはバウンスが大きいクラブがおすすめ
GD では、ターフが取れない、ダウンブローに打てない人は、バウンスが小さいほうがいいと。
湯原 いや、それはまた違う話ですよ。そういう人は、すくい打ちをしているだけです。あくまでも、いま話しているのは、ノーマルにボールを打つ人を前提にしています。プロほどのヘッドスピードはなく、ボールにきっちりとコンタクトできない、アベレージレベルのアマチュアでしたら、私は相対的にバウンスが大きいクラブをおすすめしますね。
GD 多少、ダフリ気味でもソールが滑って当たるし、ソールが滑っている間にフェース面の向きも矯正してくれるからですね。
湯原 そのとおりです。いま、プロのなかでもロングアイアンの代わりにユーティリティ(UT)を入れる選手が増えていますよね。どこにロングアイアンとUTの差があるかと言えば、最も大きな違いはソールの幅なんです。ソール幅の広いUTは、多少曖昧に打ち込んでも、ソールが滑ってロフトを確保してくれます。
湯原 ソール幅の狭いロングアイアンの場合は、もっとシビアにボールとコンタクトしなければなりませんし、ヘッドスピードも必要になります。もっとも、最近のロングアイアンは昔と比べて、ソール幅が随分と広くなっていますけどね。UTとロングアイアンは、ソール幅の違いでやさしさに差が生まれているわけです。
GD クラブ設計家の喜多和生さんは、「バウンスは角度の数値で表示されているけれど、本来はソール全体のボリュームで機能を判断するべきだ」と言っていました。ロングアイアンとUTは、ソール全体のボリュームからすると、UTのほうがバウンスとしてのソール機能が大きいということですね。
湯原 そうです。バウンス角が12度と大きめのSWでも、ソール幅が狭かったらバウンスの機能は少なくなってしまいますから。
GD クラブのカタログでは、ソール全体のボリュームについての表記はほとんど見かけませんね。買うときはカタログデータだけに頼らず、実際に手に取って試してみないとダメですね。
身の丈に合ったクラブを選ぼう
湯原 私も、年齢とともにヘッドスピードが落ちてきて、微妙なクラブの操作が難しくなってきました。だから、以前はハウンスがほとんどないアイアンを使っていましたが、今では多少、バウンスがあるアイアンに替えています。さらに、ウェッジはソール幅を広くしています。たとえば、PWでもバンカーショットが打てるぐらいにハウンスを大きめにしています。
GD 湯原プロの場合、アイアンとウェッジでは、ソール形状が違うんですか?
湯原 前に説明したとおり、重心距離やバランスなどは統一していますが、ソールに関しては、それぞれの機能を発揮できるように、アイアンとウェッジで分けて考えています。
湯原 昔はSWで50~60ヤードの距離を打つとき、クラブをポンッと落とすだけで対応できたんですが、年齢とともに同じ打ち方では難しくなってくるんですね。それで、ある程度ソール幅がある52度とかPWで対応するようになってきたんです。
GD それは、やはりボールにシビアにコンタクトしなくても、幅広ソールの持つ矯正機能でカバーできるからですか?
湯原 ええ。アイアンも昔に比べれば、ソール幅が倍ぐらいになっています。それだけソールが滑りやすいので、ダフリに対しての許容量が増えているわけです。それなのに、ウェッジだけが昔のままではナンセンスですからね。ところが、アマチュアの方は、どうもツアープロが使っているという理由だけで、難しいツアーモデルを選んでしまう傾向があるんですね。
湯原 ロフト58度のSWや60度のロブウェッジは、なるべく地面からの抵抗を受けないように設計されているし、極力飛ばないように作られているから、アマチュアには難しいはずなのに。
GD かなりの練習量がないと使いこなせない、難しいクラブなんですね。それに、60度のウェッジは基本的にハウンスがあまりついていませんよね。
湯原 だから60度のLWを人れているプロは、バンカーよりもグリーン周りで使うことを想定しているんです。高く上がって距離が出ないし、地面が硬くてもボールが拾いやすいようにリーディングエッジが出ています。
GD 下が硬いとバウンスは邪魔になってしまいますものね。そして、リーディングエッジはいわゆる出っ刃になっているんですね。
湯原 アメリカのトーナメントコースは、どんどん難しくなってきています。まずはグリーンが硬くて、速い。さらにグリーン周りも、昔は深いラフだったのが、今はツルツル状態に刈り込んで、グリーン上で止まらなかったボールが転がり落ちていくようになりました。フェアウェイもやはり、短<刈り込むために硬くなっています。こういうコースセッティングのときに初めて、バウンスが小さくて、リーディングエッジが出ているプロ仕様のLWが活躍するんです。
GD 我々が日ごろプレーしているコースでは、そんなセッティングは考えられません。
湯原 フィル・ミケルソンに代表されるようなロフトの寝たLWを使う選手は、かなり特殊な技術を磨いて、それを使いこなしているんです。ボールが硬い地面の上にあって、落とし場所も硬くて速い。しかもピンはすぐ手前に切られている。そんな超高難度の状況はアメリカツアーにしかない。そこで勝つために、彼らはその状況に合った道具を選び、テクニックを磨いているんです。
湯原 アマチュアがそういう場面に遭遇することはまずないし、ここまで極端に難しくなくても、自分のレベルにとって難しい状況がめぐってきたら、グリーンに乗せるだけで十分だと考えるべきです。
フィル・ミケルソンのロブショット
GD でも、ミケルソンが使っているというだけで、やっぱりバッグに入れたくなるのが、我々アマチュアの心情でもあるんですよ。
湯原 それは私がどう言っても仕方ありませんけど(笑)。プロアマでアマチュアの方と回っていると、「私はSWのアプローチができないんです」と言っている人に限って、60度のLWとか58度のSWを持っているんです。「SWが使えない」というより「使えないSWを持っている」と言ったほうがぴったりでしょう。
週刊GD2013年より
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