【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
前回のお話し
自分の球筋の傾向を把握していますか?
GD ここ数回、曲げる球の話を続けてきて、“どうして球が曲がるのか”は読者に理解してもらえたと思います。ただそれでも「スライスが直らない」アマチュアはいっぱいいると思います。ひと口にスライスといっても、いろいろな原因が考えられます。体が早く開いて振り遅れていたり、ヘッド軌道がアウトサイドインのカット打ちだったり。
湯原 そういうスウィングパターンに分類して矯正しようとするのは、かえって実用的ではないと私は考えています。腰が引けているとか、リストのターンができていないとか、スウィングの一部分だけを指摘されても、自分がどのパターンに分類されるのか判断するのが難しいので、混乱するばかりですからね。
湯原 ましてや、スライスを直そうと無理矢理ボールをつかまえにいこうとすれば、右肩が出てきてカキーンと左へ引っ張る打ち方になってしまい、ますます収拾がつかなくなっていきます。
GD かえって泥沼にハマってしまうのは避けたいです。
湯原 スライスやフックを矯正するさまざまなレッスンがありますが、私がいちばん必要だと思うのは“自分の球筋の傾向を把握すること”だと思います。
GD ちょっと意地悪な質問ですが、球筋に悩むアマチュアには「スライスも出るけど、フックも出る。打ってみなければわからない」なんていう人も結構います……。
球筋がバラバラの人は「自分自身の基準作り」
湯原 そういう人はまず自分自身のスウィングの基準作りが必要ですね。
GD 湯原プロはこの連載でもまず最初に、自分自身のスタンダードの大切さを説きました。
湯原 はっきりした基準がなければ、狙っていないのにスライスしたりフックしたりしたときに、その原因を追究するなど無理な話なのです。基準があるから、そこからズレたときにその原因を探すことができるわけです。だからこそ、まずは自分のスタンダードをしっかり作ることから始めなければなりません。
GD 具体的には、どんなところから手をつければいいのでしょう。
湯原 まずは、ターゲットに対する体の向き。そして、スタンスの広さと、それに対してどこにボールを置くかです。
GD まるで初心者向けのレッスンのようですね。
湯原 基準を作るというのはそういうものです。アマチュアとラウンドしていると、その初歩的な部分が疎かになっている人が非常に目立つんです。
GD なるほど。よく「上手い人ほど基本に忠実」といわれます。
アドレスの視線は三次元だから難しい
湯原 まずは、アライメントからチェックしていきましょう。
湯原 基準のない人の大半が右を向きがちです。プロアマなどで一緒に回るアマチュアに、私のアドレスを飛球線後方から見てもらって「このアドレスはどこを向いていますか」と質問すると、「フェアウェイセンターです」と返事が返ってきます。
湯原 次に「じゃあ、今の景色を覚えておいて、私が構えた場所に同じスタンスで立ってみてください」といって立ってもらうんです。すると、たいていの人は「えっ、こんなに左を向いているんですか」とびっくりするんですよ。
GD 湯原プロの構えを後ろから客観的に見ているときは真っすぐセンターに向いているように見えていたのに、自分が同じスタンスで立ってみると左を向いているように感じる……。どうしてでしょう。
湯原 平面、つまり二次元で見ているときは、体の向きを目標方向と平行にすることはそれほど難しくはないのですが、実際のアドレスは、目とボールとスタンスというふうに三次元になるので、そこに錯覚が起きやすいのです。
湯原 これはゴルフ特有の難しさといってもいいでしょう。日常の動作や他のスポーツの多くは、目標が体の正面にあって、それに対して運動を行いますが、目標線と体が平行になるものはほとんどありません。
「渋野日向子プロ流アドレス」のコツはこちら↓
GD それが、アマチュアの右向きアドレスの原因なんですね。では、目標線に対して平行に立っためにはどうしたらいいのでしょうか。
湯原 練習場では、マットを利用して目標線に対して平行に立つ訓練をしてください。それを徹底して、その角度から見える景色に馴染むようにするのです。このとき、つま先ではなく、かかとを基準にして平行に立つように注意してください。
GD どうしてかかとなんですか?
湯原 私のスタンスを見てください。左つま先がちょっとだけ開いていますよね。でも、右足と左足のかかとを結んだラインはマットの線(目標線)と平行になっているので、これはオープンスタンスではないのです。
湯原 左右のつま先を結んだ線は、左つま先が開いたぶんだけマットのラインとは平行に見えません。1センチ程度のズレとはいえ、直径約4.3センチのボールを打つのですから、わずかな差とはいえないし、それが200ヤードも300ヤードも先に飛んでいくとなれば、大きな違いを生んでしまいますからね。
GD 練習場ではわかりやすい目安があるからいいのですが、肝心のコースで平行に立つコツはありますか?
湯原 特別なコツはないですね。
GD ボール位置の基準についてはどうでしょうか。
いつも同じ景色で構える
湯原 アマチュアに「ドライバーのボール位置はどこですか?」と聞くと、たいていの人が「左足のかかとの前です」と答えます。それはそれでいいと思います。
湯原 でも、いざ構えてみると、左のつま先よりさらに左に置いていたりするんです。答えていることと、実際にやっていることが違う。それは、きちんとした基準を作っていないから起きるのでしょう。基準があって初めて応用があるのです。
湯原 その応用の範囲もボールの位置でいえばせいぜいボール3個ぶんぐらいの違いでしかありません。
GD スライスやフックの癖を矯正したいと考えていても、基準がなければ、その場しのぎの手直ししかできないという訳ですね。そして基準となるのは、まず方向取り、次にボール位置なんですね。
湯原 頭の位置にも気をつけてほしいですね。私が教えているゴルフ部の学生のなかに、頭を右に傾けてアドレスする癖のある子がいたんですが、それを指摘しただけでショットが格段に良くなったという事例もあります。
湯原 いつも同じ位置にボールを置いていたとしても、頭の位置が前後左右に変わったり、傾いたりしたら、目に入る景色はまったく違ってきますから。
GD 姿勢というものは、その日の気分とか、体調によっても変わりますからね。トーナメントを見ていると、優勝争いから脱落した選手の姿勢が何となくうつむき加減になってしまうという印象もあります。
湯原 中部銀次郎さんは、よく行く店のカウンターでいつも同じ席に同じ姿勢で座って、煙草の吸殻は同じ長さで、同じ曲がり具合できれいに並べていたという話を以前しました。今思えば、それは「いつでも同じようにものを見るように努めていたから」という気がします。
中部銀次郎さんの伝説はこちら↓
GD さすが中部さんですね。そこまで徹底することはなかなかできません。それだけ自分自身のスタンダードを持つことは大切なのですね。
週刊GDより
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