ムダな動きを抑えてミスをなくすために、「手首を固めよう」という教え方がある。しかし、ユハラは「アマチュアはそうした教えを守ることばかりに固執してしまい、状況によって柔軟に対応できない人が多い」という。手首をはじめとする体の関節を固めずに、柔らかくしておくことのメリットとは? 今週の通勤GDは「迷ったときは、ユハラに帰れ!」Vol.41。

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。

前回のお話し↓

関節に伸びしろを
持たせる

湯原 クラブの重みを支える程度の力で握っていれば、ダウンスウィングでヘッドは手よりちょっと遅れて、そのあとにビューンと戻ってくるものなのです。何もアプローチに限らず、そういう感覚を持っていれば、すべてのショットに応用できます。

GD クラブを支えられる程度の握カで握るというのは、手首を柔らかく保ったままスウィングするということですよね。

湯原 手首ばかりではありませんよ。ひじや肩の関節なども、目一杯にグッと伸ばし切ってしまったのでは、逆にロックしてしまいます。

GD可動域が狭くなってしまうんですね。

湯原 そうです。試しに、ひじをギュっと伸ばしてみてください。伸ばすと、それ以上、外側にいかないようにロックしてしまいます。その状態だとスウィングはうまくいくはずありません。ある程度、関節を緩ませておくから、インパクトでバーンと伸びるのです。テークバックで一生懸命、左腕を真っすぐに伸ばそうとしている人がいますが、伸ばしてしまうと、そこですでに、ひじの関節がロックされてしまいます。そのままインパクトヘ向かうとダフってしまうので、ひじを引いてしまうのです。

GD 日本人特有の“引く”動作がそこで入ってしまう訳ですか。そうならないためにも、関節には“伸びしろ”を持たせておかなければならないのですね。

釘を打つような
手首使いがいい

湯原 以前、「インパクトでもっとジャンプしなさい」という話をしましたね。「飛び上がる」といっても、ひざを伸ばしたり、靴のなかでかかとをちょっと浮かせる程度なので、言葉の印象ほど目立ちませんが、そうすることで地面からパワーをもらえるのです。そのために、ひざを曲げて構えるのです。ひざを曲げても頭の位置はせいぜい1㌢か2㌢ぐらいしか低くなりません。インパクトでひざが伸びると同時に、脱力していた腕がバーンと伸びることで、ちょうどボールに届くのです。そういう「クラブに引っ張られてバーンと振り抜く」という感覚がスウィングには大切なのです。三角形を崩さないとか、リストを固めるとか、そういうことに囚われていると、この感覚はなかなか身につきません。

GD 手首もやはり緩ませておく感覚ですか?

湯原 金槌で釘を打つとき、手首を使わずに腕の上下だけで打つ人はいないでしょう。必ず手首を使って打ちます。それと同じなんです。この手首の動きが、スウィングでも自然とできるようになればいいのです。

GD なるほど。細い釘を軟らかい板に打つときは、ほとんど手首だけで打つし、太い釘を硬い板に打つときは、肩、ひじ、手首の全部を総動員して打ちますね。考えてみると、細い釘は短いアプローチで、太い釘はドライバーのような気もします。

湯原 金槌を持って(縦方向、つまり親指方向に上げて小指側にスナップさせて)振り下ろす……。

画像: 金槌のように、手首を柔らかく、縦方向に使うことがスウィングでも大切だ

金槌のように、手首を柔らかく、縦方向に使うことがスウィングでも大切だ

GD ちょっと待ってください。ゴルフでは右利きの人の場合、ボールは左方向へ飛ばすんですから、手首の動きは、(平手を打つように)右手の甲側から手のひら側へスナップさせて打つんじゃないんですか?

湯原 そうではありません。スウィング中の手の動きというものは、縦方向であって、横方向への動作ではないのです。スウィングを解析すると、腕は下へ振り下ろして、体は回転する。そのコンビネーションでできているのです。その腕の動きをより速く、力強くするためには、手首も縦に動くべきなのです。

GD スウィング中の腕の動きというものは、縦方向に動くもの。別の表現をすると、垂直に近いV字軌道を描くんですね。頭ではわかっていても、やはり左に飛ばすことを考えると、横から打つイメージをしがちです。

湯原 横に手首を使うというのは、ボールの横っ面を叩こうという発想です。その辺りは、プロとアマの感覚の違いなのでしょう。

GD しかし、よく考えてみれば、横方向に打つという動作は、手のひらで打とうとするのだから、典型的な手打ちの動作ですね。

湯原 体を回転させないで、手先だけでボールを打つのなら、手首は右の手のひら側に折れるようにアンコックするのでしょうが、体は回転しているのですから、腕も手首も縦方向に動くのが正解なのです。縦にコックさせた手首は、インパクトで縦にアンコックされて解放されるのです。そういう理解と感覚が必要です。

画像: 「スウィングは、体の回転と腕の上げ下げの2つの動作の組み合わせ。仮に体を回さなければ、軌道はV字になります。横ではなく縦のイメージが重要ですよ」(ユハラ)

「スウィングは、体の回転と腕の上げ下げの2つの動作の組み合わせ。仮に体を回さなければ、軌道はV字になります。横ではなく縦のイメージが重要ですよ」(ユハラ)

動く部分を
意識して動かす

GD 縦の手首の動きは、意識しなくても、手首を柔らかく保っていれば自然とできるものなんでしょうか?

湯原 難しいところですね。何かしらのスポーツ経験がある人だったら、それに置き換えて自分の想像力を膨らませる方法もあるでしょう。

GD 前回出てきた新体操の経験がある女子学生なら、リボンを動かす感覚とリンクさせるとか、そういうことですね。スポーツを何もやってこなかった人は、やはりひたすら球を打って練習するしかなさそうですね(笑)

湯原 何かに置き換えられないのであれば、練習で手首の動きを意識して試すしかないでしょう。それを重ねていくことで、手は縦に動いて、それが体の回転とシンクロするという感覚を体感するのです。肩から先の、腕やひじ、手首に余裕を持たせて軟らかく使うことができれば、ある程度は、いわゆる“タメ”は作れるはずです。 

GD そのためには、まずは「三角形を崩さずに手首を固める」という言葉にとらわれないようにする落ちうことですね。考えなければいけないのは、いかに体を柔軟に保つか。

湯原 そうです。あと、体を固めすぎなるな、ということの補足として、「助骨のあたりを意識して回すこと」も有効だと思います。

GD どういうことですか?

湯原 なぜなら、体の構造上、上半身の骨格でそこがいちばん動く部分なのです。そこを固めてしまうと、スムーズにスウィングできません。

GD 助骨というと、上半身でも上の方ですかね。

湯原 頸椎から助骨までのあたりは、バックスウィングでねじりやすい部分です。といっても、ねじれるのはせいぜい30度ぐらいですが。一方、助骨の下にある腰はねじろうと思ってもねじれません。

GD 動かせない部分を動かそうとするよりも、動く部分を意識して動かそうということですね。

湯原 動かせる部分、つまり助骨のあたりを意識して、テークバックからトップへとクラブを上げます。そして、トップからの切り返しでは、できるだけ体が開かないようにして、クラブを立てに振り下ろすのです。 

GD 切り返しから、ダウンスウィングで体が開かないというのも、アマチュアにとって大変難しいところなんです。

湯原 しかし、それができないと、右肩が出てきてミスにつながります。まあ、両肩と手の三角形を崩さないという教えを忠実に守ろうとすると、そうなってしまいますが…。

GD 確かに、プロゴルファーのダウンスウィングを連続写真で見ると、インパクトのぎりぎりまで胸は右下を向いています。飛距離の出るプロほど、その傾向が強いですね。

湯原 助骨のあたりが回り始めても、胸は右下を向いているという、ある意味、部分で時間差ができるわけです。それが、いわゆるタメというものになるのです。

GD それと同時に、ひざなど下半身が上へ伸びて、上体は沈み込んで地面からパワーをもらう。そして、体は回転しながら、腕とリストは縦に動く。それができたら、相当、飛距離は出るでしょうね。

湯原 ただ漠然とボールを打つ練習をするより、そういう体の機能をどう使うのが合理的なのかを頭に入れておいた方が、より効率のいい練習になるのは間違いありません。

GD プロのように打てるかどうかは別にして、体の仕組みや、スウィングの動きなどを理解していれば、少なくとも、レッスンマニュアルに縛り付けられることからは免れられそうですね。

週刊GDより

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