【解説】内藤雄士(プロコーチ)
ないとうゆうじ。プロコーチ。日大ゴルフ時代、米国にゴルフ留学し、最新の理論を学ぶ。その後、丸山茂樹、平塚哲二、矢野東らのコーチを務める。ラーニングゴルフクラブ代表
タメを作る
5つの要素
タメというのは、下半身から上半身への連動性によって生まれる時間差です。下半身の動きで腕が引き下ろされたとき、グリップエンドよりもヘッドが遅れて下りてきて、手首とクラブの角度が強くなるほど、「タメが強い」スウィングと呼ばれるのです。
基本的に…
①バックスウィングでクラブヘッドがワイドに(体から離れて)上がって、ナローに(体に引きつけられて)下りてくるほど
②手首が柔らかいほど
③グリッププレッシャーがソフトなほど
④切り返しにおける上半身と下半身の捻転差が大きいほど
⑤ダウンで左手首を甲側に折るほど
タメは強くなります。
まずは、これら5つの要素を強く持つ、タメの強いプレーヤーのダウンスウィングを見ていくことにしましょう。
天才肌の多い
【タメ“強”】
タメが強くなるほど、飛距離は出やすくなるが、ボールコントロールは難しくなる。それゆえ、タメの強い選手には、クラブの重心管理、フェースコントロール、球さばきの上手い、天才肌のプレーヤーが多いようだ。
【フィル・ミケルソン】
タメを作る右の強さと左の柔らかさ
右利きのレフティなので、右で引っ張る力が強く、左手が柔らかい。さらに、腕を柔らかく使うことで強いタメを作っている。
![画像: 【フィル・ミケルソン】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/e390cc143e3dde18b79d3c36580700306e9079e0_xlarge.jpg)
![画像: 49歳で300Y出せるのは強いタメのおかげ](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/cf0aae2cd5acb9cdfc29348a0ed0a6ed7b5faf02_xlarge.jpg)
49歳で300Y出せるのは強いタメのおかげ
【リッキー・ファウラー】
深いトップと強い捻転差
切り返しの捻転差の強さでタメを作り出すタイプ。しっかり回転した深いトップもタメの強さにつながっている。
![画像: 【リッキー・ファウラー】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/5ffb55e7418fcda338023a0034f4210f67351b34_xlarge.jpg)
![画像: 軌道はフラットだが、ダウンでクラブを立てる動きが見られる](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/b5bfe2d18fefbbae27dd9d33247500ed262bd7aa_xlarge.jpg)
軌道はフラットだが、ダウンでクラブを立てる動きが見られる
【ジョーダン・スピース】
左利き右打ちは左リードが強い
左利きの右打ちなので、左リードが強い。胸を右に向けたまま、左腕を引き下ろすことで強いタメを生み出している。
![画像: 【ジョーダン・スピース】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/02ab91467def7a844233bd313785528f3e374bb5_xlarge.jpg)
【ゲーリー・ウッドランド】
クラブを立て引き下ろす
体を右に向けたまま、クラブを立てて引き下ろすことでタメを作っている。ダウン初期のタメが強く、リリースは早め。
![画像: 【ゲーリー・ウッドランド】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/95317d2d297000d7cf7f381f2082f11b2e09959a_xlarge.jpg)
【ブルックス・ケプカ】
タメにつながる左手首の動き
トップで手のひら側に折っていた左手首を、ダウンで少しゆるめる(甲側に戻す)ことで、タメを強めている。
![画像: 【ブルックス・ケプカ】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/f2f4b9e0b6f5c2360e80f845ee1a0b1f4182e5cc_xlarge.jpg)
![画像: トップで閉じていたフェースが、ダウンでスクェアに戻るのは、左手首をゆるめた証拠](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/7d6dfc9809059c1b216d52da19975d6ed1ea6eb1_xlarge.jpg)
トップで閉じていたフェースが、ダウンでスクェアに戻るのは、左手首をゆるめた証拠
【キャメロン・チャンプ】
屈指の捻転差が深いタメを生む
切り返した瞬間、腰が目標を向いているのに、胸はまだ右を向いている。この大きな捻転差が深いタメを生む
![画像: 【キャメロン・チャンプ】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/0f8c522ea0353f25ad21103e1359fd62bc46284b_xlarge.jpg)
![画像: 捻転差の大きさは、今回取り上げた選手のなかで一番](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/f62fb36ddbd12cb1e4e894dccdbf2212b20a0356_xlarge.jpg)
捻転差の大きさは、今回取り上げた選手のなかで一番
【セルヒオ・ガルシア】
タメの強さはツアー随一
体と手首の柔らかさ、切り返しの捻転差の強さ、強いワイド&ナローの動き。タメを強くする要素がすべて揃っている。
![画像: 【セルヒオ・ガルシア】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/35e37289d76862de81f2c1467cf77d3ab45884e5_xlarge.jpg)
![画像: 若い頃は、切り返しでクラブが肩に当たりそうなほどタメが強かった](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/ee30a52f650eb9168e451564a5f0db96d01e465e_xlarge.jpg)
若い頃は、切り返しでクラブが肩に当たりそうなほどタメが強かった
【シェーン・ローリー】
怪力が放つフェード
ダウンで左手首を甲側に折り、オープンフェースでタメを強くして、体の回転でフェードを打っている。これで300Y飛ぶのは怪力の彼ならでは。
![画像: 【シェーン・ローリー】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/b7de8a42ad1cc0f50461a59b57f9dacba477530d_xlarge.jpg)
スウィングのキレイな
【タメ“中”】
切り返しの捻転差が強すぎず弱すぎず、手首や体の柔らかさ、タメとリリースの量が適度で、動きが教科書どおりのグループ。その結果、スウィングのキレイな人ばかりが集まった。
【アダム・スコット】
お手本のようなタメと動き
左腕とクラブが90度になるタメも、切り返しの捻転差も教科書どおり。タメすぎず、リリースしすぎない、連動性の高い動きはまさにお手本。
![画像: 【アダム・スコット】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/44329bc6a066f6faf00154bc7d965c001a2b5c2a_xlarge.jpg)
![画像: 右肩からクラブが下りて、左肩に抜ける軌道も教科書どおり](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/daf9c0c19a4c7af7b9c290a7651afd3fb0327fee_xlarge.jpg)
右肩からクラブが下りて、左肩に抜ける軌道も教科書どおり
【ロリー・マキロイ】
捻転差は強いが手首はタメない
切り返しの捻転差が強いのでタメが強そうに見えるが、グリップエンドと体の距離を変えず、手首のタメは抑えている。飛距離と方向性を両立させた動き。
![画像: 【ロリー・マキロイ】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/843119d2fa3539e013bd2c12f839d0fc90958622_xlarge.jpg)
【ジャスティン・トーマス】
タメすぎないグリップの動き
切り返しの捻転差が強すぎず、ダウンにおけるグリップエンドから肩までの距離が遠いので、タメが
強くなりすぎない。
![画像: 【ジャスティン・トーマス】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/48ed6d1ad39b21d8c88f2c7305b4d9bf1e96e6ef_xlarge.jpg)
【タイガー・ウッズ】
理想的な90度のタメ
ノーコックでワイドに上げ、引きつけて下ろしているが、グリップエンドが体から遠いので、90度の理想的なタメになっている。
![画像: ダウンスウィング](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/424ff5025fec8645206fe0dc304e1abe338c342c_xlarge.jpg)
ダウンスウィング
パワーヒッター揃いの
【タメ“弱”】
タメが弱いと、バックスウィングとダウンスウィングの軌道が近くなるため、再現性、安定性は高くなるが、飛距離が出しにくい。その結果、このグループには、タメが弱くても飛ばせるパワーヒッターが揃う。
【松山英樹】
リリース早めでタメは弱い
ダウンのリリースが早いのでタメは強くないが、体の捻転差が強く、下半身からの連動性が高いので飛距離は落ちない。
![画像: 【松山英樹】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/58f4f06a41542c689318c4efb43f1414c57b2f96_xlarge.jpg)
![画像: リリースが早いのは、トップでのオープンフェースを補うため](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/daf9df8854a4e04b6366d5c85c0a8025f4fdec7f_xlarge.jpg)
リリースが早いのは、トップでのオープンフェースを補うため
【ジェイソン・デイ】
ノーコックでさらにタメない
アプローチからショットまで、ノーコックで上げ、ダウンでタメない。普通の選手であればまったく飛ばない動きだが、体の強さと捻転差でそれを補っている。
![画像: 【ジェイソン・デイ】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/64f0af98c6298309ee6bd5ea788aaf145bbf2983_xlarge.jpg)
【ダスティン・ジョンソン】
タメない動きで左のミスを防ぐ
フェースを超シャットに使うので、ダウンでタメると左のミスにつながる。それを防ぐため、両わきを締め、手首の角度を変えず、体の回転だけで打っている。
![画像: 【ダスティン・ジョンソン】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/06c8a1384da5bc29779658be3f022d902a995646_xlarge.jpg)
【ジョン・ラーム】
タメの強い選手と動きは同じ
体の動き自体はタメの強い選手と同じだが、トップが小さすぎて、結果としてタメが弱くなっている特殊な例。
![画像: 【ジョン・ラーム】](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783386/rc/2020/04/30/345b04396477dc4a41cc4d4565326f137243d60f_xlarge.jpg)
タメの強い
選手は減った
ダウンにおける強いタメは、プロの象徴のように言われます。しかし、現代では、ガルシアのように強烈にタメる選手は減ってきました。これは、クラブの進化による影響が大きいでしょう。
現代の重心距離の長いクラブは、タメすぎるとフェースがスクェアに戻りにくいという特性があります。つまり、タメないほうがボールを操作しやすくなったのです。また、昔はシャフトが重かったために、クラブを立て、体に引きつけて下ろす必要があり、それが強いタメにつながっていました。
しかし、シャフトの軽量化によって、その動作が必要なくなったのです。とはいえ、タメ自体がいらなくなったわけではありません。下半身から動き出して、上半身、クラブへと力を伝えるのはスウィングの基本。それによって、タメのある動きを目指すことは、とても大切なことなのです。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa
週刊ゴルフダイジェスト5月5日号より
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