道具の進化や環境の変化などで、使う道具や、打ち方は変わるのか、替えるべきなのか。飛距離300㍎超え時代の、ウェッジのロフトのお話です。今週の通勤GDは「もう一花のゴルフ」Vol.26

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

画像: 【通勤GD】海老原清治&奥田靖己 もう一花のゴルフVol.26 「プラス2度問題」を考える ゴルフダイジェストWEB

海老原清治
千葉生まれ。02年欧州シニアで3勝、賞金王。還暦すぎて飛距離を伸ばす超ベテラン
奥田靖己
大阪生まれ。93年日本OPなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂びを追求する

前回のお話し

前に飛ばしてなんぼ

奥田 人から聞いた話なんですけどね、あるプロが「プラス2度」というのを提唱しとるというんですわ。

海老原 プラス2度って温暖化?

奥田 いやいやウェッジのロフトの話です。ボールが硬くなって、アイアンの溝規制でスピンもあんまり入らんようになったから、そのぶんロフトを寝かしてオーバーさせんようにしようという話で、(石川)遼くんなんかは64度のウェッジになってパーが拾える確率が高たこうなったということです。エビさんはどう思われますか?

海老原 僕にはそれ、よくわからない感覚だな。だいたいアプローチっていうものは、95㌫はショートするもの。アプローチで、そりゃオーバーすることもあるけど、僕らの世界ではそういうのあんまりないからね。

奥田 なかなか突っ込んでいけないケースのほうが多いです。

海老原 手前で止まっちゃうのはいくらでもありますけどね。その話は、まず50㌫ぐらいはオーバーするクラスのプロの話じゃないですか。

奥田 そうですよね。58度のウェッジでもちょっと開いただけでロフトは60度になりますから。

海老原 なるなる。

奥田 開けば62度にもなるでしょう。そうなるとバウンスも出てきてしまいますけど。せやから60度のウェッジ入れてるヤツの気が知れんのです。

海老原 僕はね、ロフトって60度以上になるとクラブの性能がゼロになっちゃうと思うの。スカスカになっちゃう。やっぱりクラブって向こうに飛ばしてナンボなんです。前に飛ばしてね。それが64度だったら、自分の力では30㍎がやっとです。

画像: 「打ち方がバラエティーに富んどるから、極端な話、90度から20度までコントロール」(奥田)

「打ち方がバラエティーに富んどるから、極端な話、90度から20度までコントロール」(奥田)

奥田 64度でもハンドファーストで打てば、ロフトを起こして当たるわけやから、そうやって打つという前提があるんやろな。

海老原 そう、ハンドファーストという前提がありますよね。

奥田 その前提で一定の打ち方をしとるんですね。僕らの打ち方はバラエティーに富んどるから、そうはいきません。そりゃ、極端な話、90度から20度までありですから。SW1本で全部変える。そのときの状況によって。

海老原 ワンパターンタイプの人はプラス2度でいいのかもしれませんね。

奥田 ハンドファーストのワンパターンならエエでしょうね。エビさんのウェッジは何度なんですか?

海老原 僕は、56度、52度、48度だね。58度はいらないね。

奥田 ちょっと開けば58度になりますからね。僕は58度を使ってますけど、昔はみんな56度で、58度なんてありませんでした。

海老原 そう。58度はなかったね。でもね、僕が初めて中日クラウンズに行くことになったとき60度のウェッジを持って行ったんです。

奥田 初めての中日クラウンズというと何年前です?

海老原 84年です。

奥田 30年以上も前の話やないですか。そのころ60度のウェッジなんてあったんですか!?

海老原 我孫子にクラブ工房があって、そこで作ってもらったんです。「何するの?」って聞かれたから、和合コースは我孫子よりもすごいバンカーがあって、ピンがそのすぐ上に切ってあるという話をしたら作ってくれた。

奥田 それ、使ったんですか?

海老原 練習で使ってみたけど、さっき話したように、クラブの性能がなくなってダメで、結局使わなかったんです。

奥田 よほどハンドファーストにせにゃ使われへんです。

海老原 今の若い人はドライバーの飛距離が300㍎を超えていくでしょ。僕らとは飛ぶ距離がまったく違う。そういう人たちにとってプラス2度はありなのかなとは思いますけどね。僕らにはちょっと想像できない世界だな。

奥田 ウェッジのフェースを開くと、バウンスが出てきてしまって、インパクトで跳ねて、逆に飛んでしまう。それが邪魔なんやろな。昔の人は、そうならないようにソールを上手いこと削ってはりましたよね。

海老原 普通の人にとっては、64度とかのウェッジで低い球を打とうなんて余計なこと。低い球を打ちたいのなら、もっとロフトの立ったクラブを持てばいいだけのことですから。64度で低い球を、ロフトを立てて打つのは、ものすごく難しくなっちゃいますからね。

奥田 300㍎も飛ばす連中は、いくら振っても飛ばんウェッジがほしいということなんやろね。

海老原 そういうことだと思いますよ。

奥田 エビさんの言うように95㌫がショートだとしたら、もっと突っ込むことを考えたほうがエエという話やね。以前、エビさんが言うとりましたよ。「おまえ、1㍍ショートも1㍍オーバーも同じ1㍍だろ」って(笑)。

海老原 特にアマチュアの人はチビらないことこそ大事なんです。

【花咲く一言】
アマチュアはロフト60度以下で
じゅうぶんです

画/伊藤方也

TEXT/Chiharu Kubota

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