太平洋クラブ御殿場コースの全面改修工事が終わり、徐々にコースの全貌が明らかになってきた。世界で220以上のコースを改修してきたリース・ジョーンズが設計し、松山英樹が監修した"太平洋御殿場"はどう生まれ変わったのか。藤田寛之プロと宮本勝昌プロによる練習ラウンドに同行取材させてもらった。
画像: 藤田寛之 芹澤信雄を師匠とするチーム芹澤のリーダー格。12年に賞金王。VISA太平洋マスターズは今年で22回目の出場を予定

藤田寛之
芹澤信雄を師匠とするチーム芹澤のリーダー格。12年に賞金王。VISA太平洋マスターズは今年で22回目の出場を予定

画像: 宮本勝昌 ツアー通算11勝。チーム芹澤のムードメーカー的存在。御殿場市出身で御殿場市観光親善大使も務める

宮本勝昌
ツアー通算11勝。チーム芹澤のムードメーカー的存在。御殿場市出身で御殿場市観光親善大使も務める

三井住友VISA太平洋マスターズの舞台。新グローバルスタンダードへの改修

太平洋クラブ御殿場コースの改修には、「世界遺産である富士山の景観」、「高い戦略性を持たせつつも、女性やシニアも楽しめるセッティング」といった目的もあるが、改修の本丸は「原設計を活かしながら、世界基準のトーナメント舞台にふさわしい戦略性をもたせること」だ。

担当者のリース・ジョーンズとそのチームは、昨年末から何度も御殿場に足を運び、ティグラウンドからの視覚効果、フェアウェイのライン取り、グリーンとグリーン周りの形状、バンカリングとバンかー形状や深さなど、隅から隅までを見直し、戦略度が高めてきた。

改修を担当したRees Jones(リーズ・ジョーンズ)とは
1941年生まれ。エール大学、ハーバード大学卒業。父はR・T・ジョーンズ。兄はR・T・ジョーンズJr。全米オープン、全米プロ、ライダーカップ開催コースなどメジャーを開催するクラスのコースを米国内だけで20コース以上の改修を請け負ってきた実績を持ち、いまや「オープンドクター」とまで言われるコース改修&設計のスペシャリスト。全米ゴルフコース建築家協会会長も務めた環境学者。2004年にオールド・トム・モリス賞受賞

視察を兼ねた練習ラウンド。数ホール進んだところで、藤田と宮本が話し始めた。

ティグラウンドが広くなり、ホール全体像が把握しやくなった(藤田)

「パッと見は変わっていませんが、微妙な変化があるんですよ。元の御殿場の良さを残しつつ、今の時代に合うようになった印象です」と藤田プロ。海外メジャーの出場経験も多くあるため、その改修意図に納得の様子。具体例を出してもらった。

「全体を通じて、ティグラウンドが真四角で広くなりました。フェアウェイも広く、ティショットは打ちやすくなりました。反面、バンカーの配置が効いていて入りやすくなったと感じます」(藤田)

ホールの全体像が見渡せるようになったことで、ティグラウンドからグリーンまでのショットルートが描きやすくなったという。プレーヤーにプランを考えさせたうえで攻めさせるスタイルは、PGAツアーであり、メジャー舞台の手法だ。フェアウェイは広く開放的な反面、要所にバンカーやハザードが待ち受け、それを避けるには、技量に合った戦略が必要になる。

画像: ティボックスの面積が広がって開放的に。ホールデザインの全体像が見やすくなり、ティショットが打ちやすくなった反面、フェアウェイバンカーの改良や新設により、一層の‟戦略的思考”が求められる(10番/401Y/P4)

ティボックスの面積が広がって開放的に。ホールデザインの全体像が見やすくなり、ティショットが打ちやすくなった反面、フェアウェイバンカーの改良や新設により、一層の‟戦略的思考”が求められる(10番/401Y/P4)

入りやすいところにフェアウェイバンカーが配置。アゴの高さが絶妙(宮本)

「アゴの高さが憎いんですよ。狙えそうな気もするし、(出球の)高さがギリギリの気もする。勝負どころでは狙っちゃうんだろうな」と、宮本プロが今回の改修ポイントのひとつをさっそく指摘。

フェアウェイバンカーに入ったボールに近づいた時に、ピンが見えないほどの深さがあれば、誰も狙おうという気は起きない。しかし、構えてグリーン方向を見れば、視界にはピンが入る。アゴの高さはおそらくギリギリ……。そこで、狙うか、刻むかの葛藤が始まる。この‟絶妙”なバンカーの深さと形状も、世界基準への改造ポイントだ。

画像: IP(2打目の目標地点)が280ヤードに設定され、その地点には‟つかまりやすくなった”バンカーが配置されている。グリーンを狙うのか、刻むのか、プレーヤーはつねに決断を迫られる(12番/451Y/P4)

IP(2打目の目標地点)が280ヤードに設定され、その地点には‟つかまりやすくなった”バンカーが配置されている。グリーンを狙うのか、刻むのか、プレーヤーはつねに決断を迫られる(12番/451Y/P4)

ギリギリのアゴの高さで狙ったが、アゴにぶつかり大ショート……。

グリーン奥の‟ハロー”が効いているホールが多くあります(藤田)

藤田は「グリーン奥の刈り込み部分(ハロー)が、多くのホールで効いています」と話す。

ハローとは、グリーン周りの芝を刈り込み、グリーン外にこぼれたボールをより外へ転がり出させるエリアのこと。まさにメジャー大会で見られるスタイル。ピンを狙ってオーバーした結果、ハローがあると、返しのアプローチ難度はかなり高まる。「攻め」に対するリスクを、いっそう‟ハイ”リスクにする「芝生のハザード」といえる。

「刈り込み部分が広いので、落ちどころによっては左足下がりになってしまう。もうそうなるとお手上げですね」(藤田)

画像: 芝を刈り込んでハローを生むことで、ゴルフがよりエキサイティングになる。刈り高や刈り込みエリアを調整 できるので、「通常営業時」、「競技」、「トーナメント開催時」など、舞台に応じて難度を使い分けることが可能なシステムだ

芝を刈り込んでハローを生むことで、ゴルフがよりエキサイティングになる。刈り高や刈り込みエリアを調整
できるので、「通常営業時」、「競技」、「トーナメント開催時」など、舞台に応じて難度を使い分けることが可能なシステムだ

画像: グリーンをこぼれたボールはここまで転がってしまう。(18番/525Y/P5)

グリーンをこぼれたボールはここまで転がってしまう。(18番/525Y/P5)

画像: ハローのエリアが広いと、左足下がりのライにまで転がるケースも出てくる。「こうなると、アプローチはお手上げに近いです」(藤田)

ハローのエリアが広いと、左足下がりのライにまで転がるケースも出てくる。「こうなると、アプローチはお手上げに近いです」(藤田)

改修ポイントをピックアップ

Point.1「バンカー」

バンカーをすべて見直し、アゴの高さはもちろん、形状もクローバーを広げたような形の「リースバンカー」に。狙うのか、刻むのか、判断がより難しくなっている。ガードバンカーなどはグリーン面に向かってせり上がり入りやすくなった。

フェアウェイバンカーはフェアウェイとの境目をなくし、視覚的にも難しさが増している

画像: グリーン周りのバンカーは、グリーンとバンカーとの距離を調整

グリーン周りのバンカーは、グリーンとバンカーとの距離を調整

画像: 10番フェアウェイ右に新バンカー。「手ごわい、狙いが変わる」と2人が口を揃えた

10番フェアウェイ右に新バンカー。「手ごわい、狙いが変わる」と2人が口を揃えた

Point.2「ティグラウンド」

ティボックスを広くし、スクェア感を強調。フェアウェイが広く見えるようになり、ホール全体のデザインが見やすくなった。

画像: 280ヤードのIP(ティショットの標準的な落下地点)がすべてティから正対した位置とした

280ヤードのIP(ティショットの標準的な落下地点)がすべてティから正対した位置とした

Point.3「景観」

改修テーマのひとつが、原設計を生かしながら、世界遺産・富士山の景観が映えること。改修によって5番、6番、7番を始め、コースから見る富士山の眺めが際立つようになった。

画像: 写真は18番ホール

写真は18番ホール

Point.4「フェアウェイ」
フェアウェイのライン取りをすべて見直した。

画像: フェアウェイをどう狙うか、戦略度が高まった(1番/465Y/P4)

フェアウェイをどう狙うか、戦略度が高まった(1番/465Y/P4)

藤田プロのラウンド後記
一番感じたのはフェアウェイの広さですね。一般の方はむしろプレーしやすくなったのではないかと思います。一方でバンカーの位置が効くようになって、どのホールもフェアウェイバンカーにつかまりやすい。そこには注意です

画像: 改修ポイントをピックアップ

【太平洋クラブ御殿場コース】
18H/7327Y/P72(距離はトータル約80ヤード伸長)

【三井住友VISA太平洋マスターズ】新しい太平洋御殿場を男子プロはどう挑む?

2018三井住友VISA太平洋マスターズは11月8日(Thu)~11日(Sun)。21世紀の世界基準コースへ生まれ変わった太平洋クラブ御殿場コースで戦いの火ぶたが切られるのは間もなくだ。

2018三井住友VISA太平洋マスターズ大会公式ホームページはこちら

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月刊GD2018年11月号より

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