18ホールの全バンカーを見直し「立体形状」に造り変えた
リース・ジョーンズが今回の改修にこだわったのがバンカーの見直し。 これまでのバンカー形状が“フラット”だとすると、より‟立体的”なものへ改造していった。新バンカーはアゴに高さがあるだけでなく、砂に厚みを持たせ、バンカーそのものがせり上がっているようになった。
この立体的なバンカーは、リース・ジョーンズが得意とする手法であり、世界的には「リース・バンカー」とまで言われている。バンカーに入った時の圧迫感はもちろん、遠くから見ても「そこにバンカーがある」という存在感が際立ち、よりプレーヤーの視覚にアピールするようにもなった。プレーヤーが「考えるシーン」を増やしたい、との狙いも込められた仕掛けだ。
原設計を壊さずに、バンカーの「配置」も変わった
バンカー配置の変更で、戦略性と印象の両面が大きく変わったのが10番ホール。これまではフェアウェイ右サイドには木が生えているだけだったが、その手前にバンカーを追加したことで、ティショットのプレッシャーが格段に上がった。右を避けようとすると、今度は左サイドの森やバンカーが効いてくるというホールになった。バンカーを追加しただけでなく、個々のバンカー形状も見直されティグラウンドからの見え方そのものが変わった。
バンカーを改修したことで、加藤俊輔氏の原設計を活かしながら、新しい緊張感を生み出しているところがポイントだ。加えて、17番パー3(冒頭の写真)を見てわかるように、今回の改修では日本が誇る世界遺産「 富士山」の眺めをよくするために、ところどころで木を切ったという。本特集の別の回で取り上げたとおり、拡大された ティグラウンドと相まって、コースにこれまで以上の「開放感」がもたらされた。
改修ポイント
●バンカーのアゴの下を深くえぐり、アゴがせり上がった形状に改修。バンカーに立体感が生まれ、プレーヤーの視界に飛び込んでくるように。
●景観を活かすようにいくつかの木をカット。富士山が見えるようになったと同時に、コースに開放感が生まれた。
●グリーンとガードバンカーの距離が遠いところがあったが、バンカーがグリーン面ギリギリになるよう改修。
今回取り上げたバンカー改修を含め、生まれ変わったコースを訪れてみると全体からなぜかPGAツア ーの舞台のような印象が漂う。
リース・ジョーンズの右腕として現場で指揮を執った、シニア デザイナーのブライス・スワンソン氏に伝えると、笑みを浮かべながら、「まさにそれがリースの目指したところです」と答えた。
さらにスワンソン氏は、監修を担当した松山英樹について「我々とのミーティングに綿密な準備をして臨んでくれた」と言い、当初は距離を伸ばすことも考えていたという打ち下ろしの4番ホール(パー3)について、「あそこは上空に風が流れるので、短い番手で打たせたほうが難度は増す」という松山のアドバイスに、コース設計に対する造詣の深さと、トッププレーヤーならでは鋭い視点に深い感銘を受 けたとも付け加えた。最高の設計家と、最高の監修者によって改修された御殿場コースは、まさに“国際水準”に変身した。
当時、東北福祉大2年だった松山英樹は、その年4月のマスターズでローアマを獲得。この大会でも首位と2打差の2位で最終日をスタートし、2イーグルを奪う猛チャージ。その年のマスターズチャンピオン、 C・シュワーツェルや谷口徹ら強豪プロを抑え逆転優勝。アマチュアのツアー優勝は史上3人目の快挙。松山は16年にも2位に7打の大差をつける23アンダーで2度目の優勝を飾っている
太平洋クラブ御殿場コース
静岡県御殿場市板妻941-1
TEL.0550-89-6222
18H・7327Y(改修前7246Y)・P72
原設計(加藤俊輔)、改造(R・ジョーンズ)
東名高速<御殿場I.C.>より約9km
東名高速<裾野I.C.>より約10.7km
中央高速道・東富士五湖道路<須走I.C.>より約10km
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週刊GD2018年11月6日号より