世界水準へ向けた改修とは、一体どんなコースを目指したものなのか、今野隊長はスタート前にそのコンセプトを調査していた。
【改修コンセプト】
①300ヤード時代のトーナメント舞台にふさわしい戦略性を持つ
②加藤俊輔氏がデザインした原設計を生かした改修である
③世界遺産・富士山の景観が映えること
④高い戦略性を持ちながらも一般ゴルファーも楽しめること
改修を担当したのはリース・ジョーンズ。世界で300近いコースを設計したR・T・ジョーンズJrの弟で、こちらは全米オープン、全米プロ、ライダーカップのコース改修を20コース、世界で220コース以上の改修・改造を手がけた実績を持つ、言わば改修のプロ。米国では「オープンドクター」とも呼ばれる存在だ。監修には松山英樹プロ。ジョーンズの原案をもとに松山プロの意向を反映させながらの改修だった。
いっぽう、今野隊長が引き連れる調査隊員は元研修生のフィットネストレーナーで、普段のスコア70台という腕前。隊員補佐は女性ながら100を切る実力の白ティ女子。隊長と隊員は7262ヤード(パー70)のトーナメントティから、隊員補佐はレギュラーティ(6539ヤード/パー72)からのプレーとなった。
【今野一哉プロ(調査隊一日隊長)】
千葉出身。ツアー挑戦後、アマチュアレッスンに専念、ギアにも精通。ボウタイスタイルがトレードマーク。ゴルフスクール18GOLFを主宰する36歳
大きく変わった10番からスタート。大会のバックナインをいきなり体験
スタートホールは10番(401ヤード/パー4)、いわゆる裏街道スタートだ。改修によってフェアウェイバンカーが増えて、ティグラウンドからの見た目から大きく変わった。「やや打ち下ろしでフェアウェイは広く感じますが、左のバンカーと右にある新しい2つのバンカーが曲者ですね」と隊長。ティショットは持ち球のドローボールではなく、フェード気味に打ったが曲がりが小さく左サイドのバンカーにつかまった。
2打目地点まで歩いたところで隊長は、右バンカーわきのフェアウェイにディボット跡が点在していることを指摘。「昨日までの選手たちの跡ですね。ドライバーを使わずレイアップする選手たちが多かった証拠です」。401ヤードの10番は、大会でいえばバックナインのスタートホール。安全に1打目を打ち、2打目で勝負という戦略を垣間見つつ、隊長はバンカーから2オンするも3パットでのボギースタート。
11番はトーナメントではパー4(505ヤード)、通常ではパー5。隊長は「新しいティからフェアウェイを見ると、ここも左右に新設されたバンカーが目に入ります。パー5として考えるとバンカーを避けることが第一。2打目から、通常での3打目地点にかけてはフェアウェイが広く、グリーン右手前には花道(エスケイプゾーン)もあります。ここもティショットが重要なホールですね」
14番を終えて隊長は2オーバー。バーディチャンスが決まらない。12フィートの超高速グリーンに手を焼き、打ち切れないパットが続いた。15番のパー4はワンオンの可能性があるフロントティ(300ヤード)から。トーナメント最終日もここからだった。「右サイドにグリーン方向を示す目印としてバンカーを増設した」とは、リース・ジョーンズの言葉。身長180センチの隊長が背伸びをすると、ピンフラッグの旗の部分だけが見える。
隊長のティショットは、薄いフェードでグリーン方向へ飛んだ。隊員、隊員補佐はフェアウェイにナイスショット。丘状のフェアウェイを進むと隊長のボールがグリーンに乗っているのが見える。「フェード気味に打ったのが良かったですね。こういうチャレンジホールがあるのは盛り上がりますね」と隊長、7メートルのイーグルチャンス。
しかし、ここでもパットを外してしまう。返しの1.5メートルもカップに嫌われ、結局パー。隊員もパー、隊員補佐は本日の初パー。「最終日らしいカップ位置。乗っても安心できない微妙な傾斜に切ってあるホールばかり……」と隊長は若干の嘆き節。
16番をパーで終え、17番パー3(230ヤード)。アゲンストを考慮し、5Wで打った隊長の球は左手前のピンに向かう。ボールは左のエッジに落ちたが、短く刈られた芝とスロープで左へ転がり出ていく。これもリース・ジョーンズの仕掛けのひとつ。ただし、通常営業時は、ここまで短く刈らない予定とのこと。
グリーンに乗ったところで、キャディさんが「ティのほうを振り向いてください」とひと言。振り向くとティグラウンドの上には世界遺産・富士山の大きな姿。富士山の迫力が引き立つように木を何本か伐採したという。これも改修のひとつ。
新18番はクライマックスホールのお手本! 「攻めも、守りも、左サイドキープが攻略のカギ」
いよいよ18番。左サイドのフェアウェイバンカーが大きくなり、ティから見てもプレッシャーが掛かる。ここで隊長は乾坤一擲のショット。左からのフォローに乗せたボールはバンカー上空を越えていく。フェアウェイ左サイドに止まっていたボールは残り160ヤード。8番アイアンで3段グリーンの一番奥に立つピン横に付ける。
いっぽう、右サイドから狙った隊員の3打目はいったんは右カラーにキャリーするが転がって池の縁へ。隊員はウォーターショットを3回挑戦してトリプルボギー。隊長はまたも決められず2パットのバーディ。
その後、アウト9ホールも回り、ホールアウトした一同。隊長は結局バーディを3つ獲るも、パットに苦しみ、トータル74(パーは70)。元研修生の隊員は90だった。
隊長 全体を通じて言えるのは、ティショットエリアがわりと広く、強気にドライバーで振っていけるホールが多いアウトに対して、インは10番、11番のように新しいバンカーが悩ましいところにあるホールが続き、ティショットから「考える力」が必要になります。インのティショットは、方向性だけでなく距離感も大切です。
隊員 グリーンが速いことは覚悟していましたが、ピン位置が厳しかったです。
隊長 4つのパー3はすべて池のすぐ近くか、バンカーの真上にカップが切られていました。まさにトーナメント最終日というピン位置。ただし、ここまで極端なところに普段は切らないはず。各ホール、ティグラウンドがたくさんあるので自分の飛距離に合ったティから回れば、エンジョイゴルファーも、とても楽しく回れるレイアウトです。景色は最高ですね、改修前よりも富士山を眺める回数が増えました。
隊員補佐 何より、色々な所から富士山が見えるのが嬉しいですね。17番は山頂に少し雲が掛かっていましたが大迫力でした。2番ホールのフェアウェイから見る富士山も絶景です。
隊員 戦略性だけでなく、富士山の美しさも魅力のひとつとリース・ジョーンズが語っていたことを思い出しました。
隊長 1~9番はわりと攻めていくことができるホールが続き、10番に入るとティグラウンドから考える要素が増え始め、ギューッとタイトなホールをしのぎながら18番のクライマックスへ! という18ホールの流れを感じました。
隊員補佐 それにしても、隊長の15番パー4のワンオンは凄かったです。
隊長 厳しいホールが続く中で、エンターテイメントの15番が途中に入る。メリハリがあります。
隊員 ガードバンカーは食い込むぐらいグリーンに近いバンカーが多くありました。
隊員補佐 「リース・バンカー」って呼ばれているらしいですよ。真っ白な砂でサラサラ、入れない限りはとても綺麗でした。
【それでは採点!】考えるゴルフが身につくコース。景観は満点です!
隊長 アベレージの人は、ピン位置よりもバンカーの位置をよく見て、どこに逃げ場があるのかを判断してから打つことが大切です。そういったことを教えてくれるコースです。それと最終18番はティショットが右サイドに行ったら、無理せず左サイドに刻んで、左から3オンを狙うと攻略できます。右サイドから無理に狙うと、グリーン奥まで回り込むように大きくなった池につかまりやすい。誰かみたいにね……。頭のゴルフ偏差値が試されます。
隊員 ウォーターショットでビショビショになりました。(苦笑)
【太平洋クラブ御殿場コース】
静岡県御殿場市板妻941-1
TEL.0550-89-6222
18H/7327Y/P72
開場日/1977年4月26日
原設計/加藤俊輔
改修/リース・ジョーンズ
改修監修/松山英樹プロ
グリーン/ペンクロスベント芝
アクセス/東名高速 御殿場ICより約9km 裾野ICより約10.7km
中央高速道・東富士五湖道路/須走ICより約10km
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