世界基準の東コースへ。T・ファジオ親子が改造
日本最初の36ホール倶楽部でもある「霞ヶ関カンツリー倶楽部(東・西)」。その東コースは2020年の五輪開催コース。同コースは五輪にふさわしい舞台とするべく、米国の設計家、トム・ファジオ&ローガン・ファジオ親子にコース改造を依頼し、2017年に完成。新たに誕生した「世界基準」コースに迫った。
霞ヶ関カンツリー倶楽部は、2019年で創立90年。今回改造した東コースは、戦前、藤田欽哉と赤星四郎が設計した後、C・H・アリソンが改造。戦後、接収されたコースが返還された後、東コースは1952年に復旧工事を終え再開。ちなみに西コースの戦後復旧は、井上誠一が指揮を執った。1957年には、日本チームが優勝した「カナダカップ(現ワールドカップ)」の舞台にもなり、日本に一大ゴルフブームを起こした「霞ヶ関CC」。それから半世紀以上の時間を経て、五輪会場として再び世界から注目を浴びている。
クラシックの良さを残しつつ、距離を伸ばし、1グリーン化
総支配人の今泉氏によると、コースの原型は変えずに、距離を伸長、グリーンを1グリーンにすることが主な改造内容だった。
「フルバックから打つと、ちょうどハザードに飛び込むような設計にし、プロにとって難しく、アマチュアにはやさしくなるようになっています。メンバーさんのなかには、バンカーがプレッシャーに感じないなど、簡単になったという方もいらっしゃいます」(今泉総支配人)
設計したT・ファジオは、これまで世界で250コース以上の設計・改造を手がけてきた名デザイナー(PGAナショナルCC、オーガスタナショナルGC、メリオンGC…)。
霞ヶ関CCの改造について「“霞”の東コースは、中級者には素晴らしいコースだが、上級者に少し物足りなかった。フェアウェイに高低の起伏をつけ、リスク&リワードの設計哲学を反映させる。2グリーンは1グリーンに変更。なぜならば、それが国際基準だからです」(T・ファジオ)
リスク&リワードとは、「危険から逃げずに挑戦して、成功すれば報酬(次打が有利に)が得られる」というコンセプトで、ゴルフゲームをスリリングにする一大要素だ。
さらに、「樹木は財産」として、可能な限り今ある木々を活かし、トラディショナルでありながら国際舞台にふさわしいコースに仕上げていった。
2週間に渡る五輪期間中は、芝生のコンディションを保ち続けるために、より専門性の高いキーパーを育成中とのこと。
「五輪だからと浮足立つことはせず、日本のゴルフ界活性のため協力できれば、と考えています」(今泉総支配人)
各ホール、どうのように変わったのか?
10番/168ヤード/パー3
【変更点1】ティーイングエリアからグリーン面が見えるようになった
【変更点2】2グリーンを1グリーンにし、そのときできた段差はあえて残した
【変更点3】バンカーから積みあがった砂で高くなったグリーンを、本来の高さに戻した
【変更点4】バンカーの深さを掘り下げた
●6番/360ヤード/パー4
●7番/194ヤード/パー3
●8番/369ヤード/パー5
●11番/436ヤード/パー4
●12番/463ヤード/パー4
●13番/377ヤード/パー4
●16番/185ヤード/パー3
霞ヶ関カンツリー倶楽部
埼玉県川越市大字笠幡3398(☎049-231-2181)
1929年:創設
1936年:国内初の36Hコースとなる
1957年:カナダカップ開催
東コース:18H・7466Y・P71(藤田欽哉・赤星四郎設計、C・H・アリソン改造、T・ファジオ&L・ファジオ新改修)
西コース:18H・7117Y・P73(井上誠一設計)
公式ホームページはこちら
PHOTO/Kazuya Hirosawa、Hiroaki Yokoyama、Yasuo Masuda
週刊GD2019年4月30日号より