バンカー配置に持たせた「戦略性」と「罰則性」
コース設計に欠かせないもののひとつとして、バンカーがある。上田治がバンカーに持たせる役割として、特に重要視したのが「戦略性」だった。攻略法にバラエティを持たせ、さまざまな判断をプレーヤーにさせることで、技量に応じた「攻略の道」を用意した。
なかでも上田の思想が見えるのが、グリーン周りのバンカー配置。両サイドからグリーン前面に張りだし、花道を絞るように置かれた配置は、よく目にするタイプだが、上田治はこのような配置(設計)は、「難度は高くされているが、戦略性はない」とバッサリと斬る。
そのグリーンを攻めるルートに応じた配置をしなければ、むやみに難しくするだけで終わってしまうというのだ。「戦略的なバンカーとは、あくまでも『挑む』ものだと私は考える。だから、果然と挑んだときの結果は、たとえ失敗してもあまり厳しくしない、いわば勇気への報酬があってよいと思うのである」
上田治が考えるバンカー配置の代表例を紹介すると、バンカーの先に立つピンに対して、バンカー越えに挑んだ者にはやさしく、バンカーから逃げ、安全性の高いルートを狙った者がミスをした場合、ペナルティが待っている。
バンカー配置「勇気への報酬」

果敢な挑戦には寛容を持って受け容れる
2打目地点から見ると、右手前に大きくバンカーがあり、その先にピンが立っている。バンカー越えのルートを狙い、もし球が止まらずオーバーしたとしても、その先にはエスケープゾーンを設け、それ以上のペナルティを負わせないのが上田治の考え。
右手前のバンカーを避け、花道(逃げルート)を選んだ場合、その先にはバンカーが待ち受けているため、距離感が試される(欲をかいて突っ込むと、奥のバンカーにつかまる)。花道ルートから、さらに左に逃げた場合にもバンカーを置き、ミスショットにペナルティを科す設計をとった。
上田治のバンカリング①茨木国際ゴルフ倶楽部北コース2番

茨木国際GC北2番ホール(481Y・P5)手前バンカーの先はグリーンとラフ。左右に逃げてオーバーすると両サイドともバンカーが待ち受ける

茨木国際GC北2番のバンカー配置。右側に逃げてもオーバーするとバンカーが待つ。逃げすぎても右のバンカーに転がり込む
上田治のバンカリング②古賀ゴルフ・クラブ3番

古賀GC3番ホール(349Y・P4)手前バンカーの上に立つピンを狙った先はスロープのみ。花道がある右サイドにはグリーン奥と横にもバンカーが隠れている

古賀GC3番のバンカー配置。砲台グリーンなので、奥にはスロープがあるが、花道側のようにバンカーに転がり込むことはない
上田治のバンカリング③よみうりカントリークラブ1番

よみうりCC1番ホール(419Y ・P4)グリーン左サイドのバンカーの奥はカラーとラフのみ。広い花道側には奥とサイドにバンカーが待ち受ける。戦略的配置の典型例

よみうりCC1番のバンカー配置
上田治のバンカリング④塩嶺カントリークラブしらかばコース4番

塩嶺CCしらかば4番ホール(166Y・P3)ピンが右サイドに立つ場合、手前バンカーの延長にはグリーンとラフのみ。センターの花道の左サイドから奥にかけてはバンカーがガード

塩嶺CCしらかば4番のバンカー配置。パー3のティショットにもこの配置を活かしている
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