フォアマンのジョージ・ペングレースから造成の技術を学んだ。その影響は、次の世代の井上誠一、上田治に波及し、さらに、トップアマ出身、グリーンキーパー出身、ゼネコン出身など多彩なコース設計家を生み出し、日本に「2000超」のゴルフコースが造られた。中でも多くの人気コースを生み出したのが富澤誠造だ。
井上誠一の助手からコース設計をスタート
1950年代から70年代の終わりに活躍した富澤誠造は、戦後姿を消した武蔵野CC藤ヶ谷コースでグリーンキーパーを務めた後、ゴルフ場造成のパイオニアである安達建設に入社した。井上誠一の戦後第1号となる川崎国際(現・生田緑地ゴルフ場)の造成で井上の助手を任された富澤は、コース造りのノウハウを経験し、その後、設計家として独立。息子、廣親とともに、「100コース以上」を設計した。グリーンキーパー経験のある富澤の設計は芝草、土壌、水系に精通するだけでなく、「コース管理がしやすい」と評判となり、日本でもっとも多くのゴルフコースを造りだす、人気設計家となった。
川崎国際CCが開場した1952年頃の日本のゴルフコースは、「2グリーン」が当たり前の時代だった。アリソンが描き記した英国式の戦略型コースはベント芝の1グリーンだったが、高温多湿の日本では時期尚早ということで、早々に霞ヶ関CC東コースと相模CCはメイン高麗、サブベントの2グリーンに改造することとなった。そのため、夏暑く、冬寒い関東、中部、関西の寒暖地では、世界に類をみない「ジャパニーズスタンダード」となる2グリーンコースが1970年代の終わり頃まで造られ続けることになる。
そんな時代の富澤誠造の設計は、もちろん「2グリーン」。特徴としては霞ヶ関や相模のように「メインとサブ」とはせず、どちらもメインと成り得るAグリーン、Bグリーンとした。そういった意味では、ターゲットの絞り込みの甘さは多少あるかもしれないが、2つのグリーンを同距離、同難度としたことで、「18ホール×2倍」の面白さがあると言える。
1957年、ゴルフ隆盛の起点となったカナダカップ優勝時、日本のゴルフコース数は「116コース」だった。その後、ゴルフブームとともに開発ブームが起こると、ゴルフ場造成に重機が導入され、次々とゴルフ場は造られていった。樋口久子が全米女子プロに優勝した1977年には10倍以上の「1322コース」まで拡大した。
そのためこの時代のコースは、「山を削り、ティとグリーンがあればいい」というものもあり、1950年代のものに比べると「戦略性に乏しい」という厳しい見方がされることが多い。そんな時代の中でも富澤誠造が、赤星四郎、六郎、井上誠一、上田治と並び称され、「名匠」と呼ばれる所以は長大広大な名コース、難コースを残したことだろう。
総武CC総武、琵琶湖、賀茂…トーナメントコースを設計
日本のトーナメントシーンを彩ってきた、現PGMのフラッグシップ「総武CC総武コース」しかり、全盛期のジャンボ尾崎を日本オープンで苦しめた琵琶湖CCしかり、広島では「鬼コース」と呼ばれる賀茂CCや、鳥取の大山平原CCなど県下一の難易度を誇るトーナメントコースも数多くある。
名門クラスから大衆コースも設計
一方で、府中CC、藤ヶ谷CC、千葉CC川間コースといった名門クラスのゴルフ場も手掛けた。富澤誠造は「施主の要望に応える設計家」でもあったため、庶民派コースから、名門、トーナメントコースなど作品は多彩である。
1993年の日本オープンは前年の龍ヶ崎CCで優勝し、連覇を狙うジャンボ尾崎にアンダーパーを許さず(2オーバーで2位)、唯一アンダー(3アンダー)で回った奥田靖己が優勝した。セッティングは違うにせよ、当時、日本オープンは優勝スコアをイーブンパーに設定していた時代。にもかかわらず琵琶湖CCの前後の優勝スコアは1992年龍ヶ崎CCが11アンダー、1994年四日市CCが18アンダー、ともにジャンボ尾崎が制している。ちなみに、2021年の日本オープンは、再び琵琶湖CCで開催されることが決まっている。
近年、芝の進化や管理技術の向上によって、夏場でも耐えることのできるベントグリーンが確立したことで、かつての高麗グリーンをベントに張り替え、ベントの2グリーンという「ジャパニーズスタンダード改」となるコースが増えている。中には戦略性を重視し、思い切って2グリーンを1グリーンに大改造するコースもあるが、毎年のように猛暑が心配される日本の夏でも、「グリーンが2つあ
れば、何ら問題はない」という専門機関の研究報告があるように、今後の気候風土の変化によっては、再び2グリーンが見直される日が来るかしれない。
2グリーンが必要ない、高地や高原にはダイナミックな1グリーンコースを遺した
富澤誠造は関東に約30コースを設計しているが、そのほとんどが2グリーンコースである。代表作の滋賀の琵琶湖、広島の賀茂、鳥取の大山平原、熊本の熊本空港も2グリーン設計となっているため、「2グリーンの丘陵コースの匠」というイメージがあるが、栃木北部の那須国際、福島の安達太良など、ダイナミックな1グリーンコースもしっかり残している。中でも長野県の1000メートル級の高所に「5つ」の1グリーンコースを造った。
井上誠一は赤倉ゴルフコース、上田治は諏訪に塩嶺GCを残しているが、日本二大巨頭が手を出さなかったのが長野県になる。1964年開場の松本CCは7007ヤード、コースレート72.6、1971年開場の長野CCは飯綱、戸隠の組み合わせで7019ヤード、コースレート72.8ヤードのチャンピオンコースを造り上げた。そして、日本一の標高を誇る菅平グリーン(標高1658メートル)も富澤誠造によるもの。2グリーンの丘陵コースの匠は、「天空の匠」でもある。
富澤誠造設計コース会員権情報(東日本)
【栃木県】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
栃木 | 12 | 3 | 30 |
那須国際 | 138.4 | 募集 | |
ニューセントラル | 5 | 1 | 12 |
皆川城 | 10 | 1 | 30 |
東ノ宮 | 20 | 5 | 30 |
大日向 | 17 | 3 | 12.5 |
鶴 | 10 | 5 | 50 |
あさひヶ丘 | 8 | 1 | 20 |
【茨城県】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
白帆 | 35 | 15 | 30 |
茨城パシフィック | 15 | 5 | 5 |
富士笠間 | 5 | 1 | 30 |
【群馬県】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
美野原 | 8 | 1 | 20 |
【千葉県】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
千葉(川間) | 420 | 360 | ※450 |
藤ヶ谷 | 260 | 180 | 200 |
船橋 | 55 | 30 | ※220 |
総武 | 270 | 215 | 80 |
小御門 | 停止中 | ||
佐倉 | 150 | 100 | 130 |
房州 | 20 | 3 | 20 |
万木城 | 7 | 5 | 50 |
加茂 | 70 | 募集 |
【東京都】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
府中 | 300 | 200 | ※500 |
【神奈川県】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
小田原湯本 | 20 | 7 | 100 |
レインボー | 80 | 40 | ※200 |
【静岡県】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
修善寺 | 5 | 1 | 15 |
富士箱根 | 停止中 | ||
朝霧 | 譲不 | ||
足柄森林 | 25 | 10 | 40 |
富士御殿場 | 10 | 1 | 15 |
【新潟県】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
新津 | 20 | 10 | 20 |
【長野県】
コース名 | 売り | 買い | 名変 |
---|---|---|---|
松本 | 65 | 30 | 30 |
長野 | 130 | 80 | 50 |
諏訪湖 | 30 | 20 | 50 |
菅平グリーン | 15 | 10 | 10 |
サニー | 停止中 |
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