青木功VS羽川豊───またとない好カードで迎えた「日本マッチプレー」決勝戦。ギャラリーも大挙押し寄せバーディの応酬という白熱したゲームに手に汗を握った。躍進著しいさしもの羽川も、青木の見せた猛チャージの前ではシッポをまくよりほかになかったが、マッチプレーの醍醐味を存分に楽しませてくれる試合だった。

【ゴルフコースの評価基準】
ゴルフコースを評価する「7つ」の項目がある。①ショットバリュー、②難易度、③デザイン・バランス、④ホールの印象、⑤景観の美しさ、⑥コンディション、⑦伝統・雰囲気。この7項目は米国ゴルフダイジェスト、ゴルフマガジンが発表するランキングの評価基準にもなっている。当コラム【伝説の名勝負。ヒーローの足跡】は、このコースでどのような「歴史」が作られ、「公式競技」を開催したかを掘り起こすことで、「伝統と雰囲気」をみるものです。

勝率8割4分3厘の「マッチプレー男」青木功の戦術

画像: 1982年の日本マッチプレー。決勝は青木功vs羽川豊の対決

1982年の日本マッチプレー。決勝は青木功vs羽川豊の対決

奇しくも、準決勝で謝敏男を下した34ホール目に、今度は羽川豊の息の根を止めた。当大会2年連続、4度目の優勝を飾った青木功。その姿は王者たるものの貫禄があふれていた。

青木語録、「あの16番(502メートル、パー5)は快心のティショットだった。飛距離も出たし、ポジションも最高。羽川に落胆を誘うようなショットだったと思う。前のホールで(羽川は)ボギーを叩き3ダウンにして、シマッタと思った矢先だったろうからね。そんな動揺もあってティショットを左の林へ曲げたんだと思う。残り3ホールで3ダウンになってしまったら誰だって落胆は隠せないよ」

15番411メートル、パー4で羽川は2打でグリーンをとらえることができず、ピン2.5メートルに3オン。青木のパーに対し、羽川は寄せワンパーをものにすることができなかった。ここを2ダウンのまま切り抜けていれば、まだ羽川にいちるの望みはあった。長打を利して16番のロングホール(パー5)を射止め、1ダウンで残り2ホールという計算もできたはずだ。そんな望みも15番のボギーと16番の青木の素晴らしいティショットでいっぺんに吹き飛ばされてしまった。

画像: パターを真っすぐ垂らしてラインを読む青木

パターを真っすぐ垂らしてラインを読む青木

青木語録、「午前中はとにかくひどすぎた。それでも3ダウンにおさまったのは儲けもの。6ダウンぐらいしてもおかしくなかった。羽川がオレにつき合ってくれたようなところもあったからな。それで救われた。試合後、羽川も言ってたけど、午前の13番(311メートル、パー4)がひとつのヤマだった。オレのボールは左の土手。2打でフェアウェイに出して3オンしたとき、羽川のティショットはフェアウェイのいいところ。あそこは4ダウンに引き放されても仕方ない状況だった。それを彼は奥のバンカーに入れ、3オン。ボギー、ボギーで分かれになったんだから、あれは羽川にしたら痛いよ。こっちはホッとしたんだけどね」

青木につけ入るスキを与えないように、先行逃げ切りでいきたいといっていた羽川。追われる圧迫感はあるかも知れないが青木が先行した場合(準決勝までの4戦中、リードを許したのは謝に4ホール目で1ダウンしただけ)、まずつかまえることは至難だ。青木を破るためには先行逃げ切りで、しかもそれを徹底させることが肝要だった。

しかし、いいところまでいきながら「ダメ」を押せなかったばかりに試合の流れはその後、徐々に青木のペースにと変わっていった。

青木、「機を見て逃げ切る、これが勝ちの理想だ」

画像: ティーショットを放つ羽川豊

ティーショットを放つ羽川豊

青木語録、「昼休みにドライバーに鉛を一枚貼ってみた。ヘッドが軽く感じて仕方なかったからだ。気分転換の意味もあったけどね。それよりパットの転がりを午後のスタート前にチェックしてみたんだ。(カップに)届かなければ入らないんだから、強めに打つ練習を10分ぐらいやった。結果的にはそれがよかったのかも知れない。3ダウンを逆転できるかできないか、残り18ホールをとにかくアンダーパー回ることが目標だった。自分のミスで負けるのは悔しい。負けるにしても自分のゴルフができて負けるんだったら納得ができる。相手のほうが調子がよかったんだからしょうがないってね」

午前の18ホール。ホールマッチでは3つ負けの青木だが、それよりもストロークで73の羽川に対し、76も叩いている。3ダウンはともかく1バーディ、5ボギーが青木にはどうも気に入らない。

30分足らずの休憩だったが、これを境に試合は急転化を見せる。

迎えた19ホール目で1メートルのバーディを決めると、21ホール目8メートル、22ホール目10メートル、24ホール目10メートルと神がかり的なバーディ攻勢が続く。羽川もバーディにはバーディでお返し(21、22ホール目)するマッチプレーのダイゴ味を存分に見せてくれたが、それも29ホール目まで。どうにも止まらぬ青木のバーディ奪取にやがてお手上げの状態になる。

画像: 羽川も好調なショットでバーディを奪い、追いすがるが…

羽川も好調なショットでバーディを奪い、追いすがるが…

青木語録、「マッチプレーは、取って取られての繰り返しがあって、機を見て逃げ切るパターンが理想だ。同じプロ同士、大差で楽に勝てるなんてことはないし、勝敗のポイントはチャンスが来たらそれを逃さず、いかにモノにするかどうかだ」

29ホール目から青木は4連続バーディを取る。30ホール目でオールスクェアになる

12メートルのバーディを沈めたときは羽川の表情もさすがにひきつった。

あんな長いのが、それもたたみかけて入れてくる──羽川のそんな思いをよそに、青木のゴルフはさながらバーディ製造機のように展開していった。

画像: 青木功

青木功

そして、3アップとリードした最後(34ホール目)は、羽川にこの試合初めてのギブアップをさそって決着をつけた。

青木語録、「マッチプレーは2つも3つもいっぺんに逆転することはできない。1つ負けていたら逆転するまでに最低2ホールかかる。要は積み重ねのゴルフだ。さらに大事なのは、確かに1対1の対決だけど、それにとらわれたらダメ。ゴルフはあくまでもストローク数を競うもので、それが相手より優っていればマッチプレーにも勝つ──これが公式だと思って念頭に置き、いつも闘っている。

その結果は、8回出場のうち4回優勝、通算27勝5敗(うち昨年から10連勝)、勝率8割4分3厘という驚くべき数字を残し「マッチプレー男」と称されることになる。

学生の時はマッチプレーに強かったかも知れないが…

こわいもの知らず──。

これは羽川だけに限らず、倉本や湯原にも共通したニューウェーブのニューウェーブたるところだったのだが、この戦いで、少なくとも羽川だけは恐怖感というものを初めて味わったのではないだろうか。

画像: 生き生きとした羽川のゴルフがこの日は発揮されず

生き生きとした羽川のゴルフがこの日は発揮されず

3日目を終えた後でのインタビューで羽川が語ったことを断片的に紹介すると、

「前半から追われる立場という方がイヤですね(羽川は河野高明に前半2アップされていた)」

「18ホールよりも36ホールの方が好きです。短いと、ちょっと調子がいいほうがそのまま行って終わってしまうでしょう」

「青木さんは完璧な人ですから、作戦どうこうよりも、いいゴルフがしたいですね。バーディのとり合いのような(河野との試合は、どちらかといえばお互いにミスのし合いをしたというゲーム展開だ
った)」

この時の羽川の脳裏には、昨年の日本シリーズの1ホールだけのマッチプレー(サドンデスのプレーオフ)、そしてその時のバーディで青木を切って捨てた鮮やかなフィナーレが浮かんでいたのかもしれない。

「あの時は1アップで試合が終わっちゃったけれど、こんどは36ホールもあるから…」とニコリ笑って言葉を濁したが、その後に「たっぷり楽しめる」と付け加えてもおかしくない表情だったがのだが…。

しかし、最終日、羽川の表情にはとまどいと不安があった。

「青木さんが、あんなにボギーを出すとは思っていなかった」

前半1ラウンドを終って3アップ。実際は、羽川も、そして青木も言っているように5アップ、6アップしていてもおかしくない展開だった。

ところが「相手が悪い時に自分も一緒にボギーを打ってはいけないのに、自分でチャンスを与えてしまった…」

これは前半の13番の話だ。青木は1打を左ラフの木の下へ入れ2打は出すだけという厳しい状況なのに、フェアウェイの好位置から羽川は、グリーンオーバー。それまで2ホール連続奪取してきた勢いを自分で止めてしまった。

画像: 前半、ショットがバラつく青木にスキをみせてしまった羽川

前半、ショットがバラつく青木にスキをみせてしまった羽川

マッチプレーは駆け引きのゲームというが、その駆け引きというのは、お互いの引っぱり合い、探り合いといった低次元のものではない。

青木が、この試合で優勝するたびに力説するのは「マッチプレーでもスコアがいい方が必ず勝つ」ということ。つまり、いかに相手にまどわされず、マイペースでラウンドできるかが勝つための最大の基礎となるわけだ。しかし、羽川は、自分のペースを忘れていたようだった。

日本シリーズで、そしてマスターズで、あれほど伸び伸びと生き生きとプレーした羽川が、青木の幻影におびえたかに、ぎくしゃくしたチグハグ消極的な攻めを見せた。

自分のプレーに専念することよりも「(前半は悪かった)青木さんのパットがいつ入ってくるのかな、いつ入ってくるのかなと思っていた」

画像: ロングパットを次々決めて、羽川にプレッシャーをかける青木

ロングパットを次々決めて、羽川にプレッシャーをかける青木

羽川は「どこからでも入れてくるんだから心の準備をしておかないと…」と弁解するが、これではどうしても浮き足だってしまう。

羽川が期待していたバーディのとり合いは、第2ラウンドの3番、4番で実現した。

3番で青木が入れ、羽川が入れ返す。4番では、まず羽川が入れ、青木が入れ返す。

この4番の青木のパンチは、羽川に想像以上のダメージを与えたはずだ。

青木は言う。

「学生の時は(マッチプレー)強かったかもしれないが、マッチプレーでもアマとプロの違いがあるんだ。アマはバーディをとれば相手がビックリするけど、プロは入れ返してくるもんなんだ。これがお金がかかっているかどうかの差だね」

「いつ入ってくるか」という不安が適中した後の羽川は、ただ呆然と青木のミラクルパットを見るだけだった。

画像1: 学生の時はマッチプレーに強かったかも知れないが…

「本当に凄いです。入り出すとドンドン、長いのを連続して入れてくるんですからね。普通ならば2、3発入れば休むんですけどね…」

それに対して、あまりにもショットがブレ過ぎた羽川は、グリーンを外し、アプローチも寄らないのでは反撃の糸口はつかめない。

「やっぱりマッチプレーは、グリーンを外してはいけない」と当然過ぎるほどのコメントを力なくつぶやいた羽川。

「5ホール連続とられたなんて経験は学生時代にあった?」の質問に、コーナーの椅子に坐ってゴングを待つKO寸前のボクサーのように、目をつむりゆっくりと首を左右に振った。

画像2: 学生の時はマッチプレーに強かったかも知れないが…

(週刊ゴルフダイジェスト1982年6月2日)

【ゴルフ場データ】
戸塚カントリー倶楽部
神奈川県横浜市旭区大池町26
TEL 045-351-1241
コースタイプ/丘陵コース
グリーン/西コース・ベントの2グリーン 
     東コース・ベントの1グリーン
会員権/預託金制で譲渡可
西コース/7261ヤード/パー72
コースレート74.5/スロープレート133
設計/井上誠一
東コース/6749ヤード/パー72
コースレート72.5/スロープレート130
設計/間野貞吉 2007年改造/大久保昌
開場/1961年
公式ホームページはこちら

現在の戸塚カントリークラブ

画像: 戸塚CC西コース18番(426Y・P4)グリーンサイドのガードバンカー

戸塚CC西コース18番(426Y・P4)グリーンサイドのガードバンカー

画像: 西コース1番(447Y・P4)打ち下ろしの広いパー4。晴れた日はティから富士山が見える、4月には桜が咲く

西コース1番(447Y・P4)打ち下ろしの広いパー4。晴れた日はティから富士山が見える、4月には桜が咲く

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