1987年度日本オープン選手権の覇者となった青木功。ウィニングパットを決めたときのガッツポーズが印象に残った。国内では今季5勝目。例年に比べると調子は悪くない。しかし、度重なる海外遠征での敗退によって青木功の心はいつも曇天のなかにあった。そんな曇り空が一気に晴れた、そんな気持ちが伝わってくるようなガッツポーズだった。4年前の六甲国際に続き、2度目の日本オープン優勝。青木にとって六甲の水はひときわ美味しく感じられたことだろう。その名の通り、アマチュアを含む、日本での実力ナンバー1を決定する日本オープンだけに、青木自身が予想した優勝スコア、12アンダーを3打下回る9アンダーは、大きなプレッシャーによる結果とも言えよう。とはいえ、若手の成長株 芹澤信雄、2年連続賞金王 中嶋常幸、そして世界の青木。世代の異なる3人が各々の実力、そして魅力を十分に発揮した試合展開となり、トーナメントを盛り上げた。爽やかな秋空のなか、青木功の黒光りする顔が輝いて見えた。

【ゴルフコースの評価基準】
ゴルフコースを評価する「7つ」の項目がある。①ショットバリュー、②難易度、③デザイン・バランス、④ホールの印象、⑤景観の美しさ、⑥コンディション、⑦伝統・雰囲気。この7項目は米国ゴルフダイジェスト、ゴルフマガジンが発表するランキングの評価基準にもなっている。当コラム【伝説の名勝負。ヒーローの足跡】は、このコースでどのような「歴史」が作られ、「公式競技」を開催したかを掘り起こすことで、「伝統と雰囲気」をみるものです。

「寄せワンで優勝。あの場面でパーを獲れるのは、ボクとジャンボと青木さんの3人しかいない」(中嶋常幸)

最終日朝、藤木三郎の顔は青かった。

食事時、練習時、そして1番ティ上でも青かった。

パー5の1番ホール、ティショットは左の林の中。セカンドは出しただけ。サードは左グリーンエッジの深いラフの中。第4打はピンオーバーの4メートル。その間、ずーっと藤木の顔色は青かった。

この4メートルのパットを外した瞬間、顔が赤らんだ。頬は黒っぽくなった。怒りを抑えた顔でボギーパットを入れた。

藤木の上半身に力が入っている。ゆえにフィニッシュ時、体重が右足に多く残っていた。

画像: ティショットの行方を見つめる藤木三郎

ティショットの行方を見つめる藤木三郎

スウィングスピードは昨日よりはなかった。テンプラ気味のドライバーショットが2番ホールも出た。

藤木の体がシビれていた。

小さい歩幅で歩いていた。好調時の藤木は大股で歩いて行く。

1、2番とショットの乱れでボギーが続いた。そして青木に並ばれた。

この連続ボギーで初期重圧から吹っ切れたのであろう、3番からは振れ出した。せわしい動きが無くなった。大股で歩き出した。

今日一日、藤木の肝心な場面でのパットはショートばかりであった。特に13番のバーディパットを10センチショートさせている。

そこそこ打て出したのは、14番のパーパットからであった。すべてが遅れ過ぎた。藤木は勝てなかった。

「残念だな、4位とは。勝てる自信はあった。しかし、インのパットが悪かった。パットだよ、パット」

中嶋常幸は3番でボギーを叩き、2アンダーとなって6番へ来ている。アタマは7アンダーだ。2人いる。

中嶋、「そうだろう。伸びないよな…9番アイアンが悪すぎる。何ともならないよ」

中嶋は7番でバーディを取り、3アンダーでアウトを終えた。インでは5つのバーディを重ね、8アンダーで終了。

画像: 最終日のバックナインで5つスコアを伸ばして先にホールアウトした中嶋常幸

最終日のバックナインで5つスコアを伸ばして先にホールアウトした中嶋常幸

競技終了後、表彰式を待つ間、18番グリーン横で中嶋に敗因を聞いた。

中嶋、「ショートアイアンが悪過ぎた。パーディ取ったのは、7番アイアンから先の長いものばかり。ショートアイアンではグリーンに乗せるのが精一杯だった。ドライバーとパットは、マスターズで優勝を競る出来ぐあい。アイアンは月例出場者レベルだ」

そして笑いながら、「プレーオフを待っているんだけど…。18番の青木さんのティショットはうまかったな。間違っても左ラフへ打ってくるもんね。右ではエッジしか狙えないし、ドロップがかかればイージーボギーのホールだし、やっぱりあの辺が青木さんのうまさだよ」

青木功は淡々とプレーしていた。

ピンチになっても、その表情は変わらなかった。

画像: 青木功は淡々とプレーを続けていった

青木功は淡々とプレーを続けていった

画像: 青木、いつもどおりのライン読み

青木、いつもどおりのライン読み

藤木との間に会話はなかった。飯合とは時折の会話があった。

6番で3メートルを入れ8アンダー。7番でティショットを右松林の中に入れ、アプローチも寄らずボギー。

10番で1.5メートル、12番で4メートルを入れて9アンダーとなり単独トップ。藤木は8アンダー。

バーディを取っても淡々とした表情。13番で4メートルのパーパットを入れた時も淡々としていた。

トーナメントリーディングボードを見ている時も、サラッとした流し眼で見ていた。今日一日、事を凝視するという風情はなかった。前の組の拍手、歓声が流れて来ても、表情は変わりなかった。

青木は18番のセカンドを打った後、ホッとした表情を見せた。

球はグリーン左手前のラフの中。余程の事がない限り、エッジから簡単に3つは叩かぬという信念から得た、豊かな表情であった様に思えた。

画像: ウイニングパットは残り80センチ

ウイニングパットは残り80センチ

ピンまで20メートル。ボギーならプレーオフ。6番アイアンで寄せ、80センチを入れた。

青木がこぶしを固めて、ガッツを入れたのは72ホール目のパーパットを入れた時が初めてであった。

悔しいアクションを見せたのは、16番のバーディパットがカップの端をなめて外れた時のみ。耐えてつかんだ日本オープンであった様に思う。

耐えるという事の美しさを、青木功に見せて貰った。

画像: ホールアウト後のアテスト

ホールアウト後のアテスト

(週刊ゴルフダイジェスト1987年10月27日号)

【競技経過】

【初日】アウト36、イン29を出したグラハム・マーシュ(豪州)が7アンダーで首位。2位は4アンダーで飯合肇。尾崎将司は3番の誤球がたたり78で大きく出遅れた。

【2日目】飯合が3打スコアを伸ばし通算7アンダー。この日パープレーのマーシュと共に1位タイ。青木功、藤木三郎が6アンダーで3位。ジャンボは風邪で棄権。倉本昌弘は予選落ち。

【3日目】上位選手が出入りの激しいゴルフをするなか、藤木が9アンダーで一歩飛び出した。2位は7アンダーで青木。以下、飯合、芹澤信雄と続く。中嶋常幸は前日の24位から、通算3アンダーで8位に浮上、最終日に期待をつなぐ。

【最終日】藤木と飯合が崩れるなか、青木が確実にスコアを伸ばし9アンダーで優勝。2位タイに芹澤と中嶋が8アンダーで入る。藤木は7アンダーで3位。

1987年日本オープン最終結果
有馬ロイヤルGC/7034ヤード/パー72
1位  -9 青木功
2位  -8 中嶋常幸  
      芹澤信雄
4位  -7 藤木三郎
5位  -6 尾崎直道
6位  -4 入江勉 
      入野太
9位  -2 飯合肇
10位 -1 デビッド・イシイ(米)  
      金井清一 
     木村政信

有馬ロイヤルゴルフクラブ
兵庫県神戸市北区淡河町北畑571
TEL 078‐958‐0121
コースタイプ/丘陵コース(36H)
グリーン/ベントの1グリーン
会員権/預託金制で譲渡可
ロイヤル/6856ヤード/パー72
コースレート72.7/スロープレート135
設計/上田治
ノーブル/7148ヤード/パー72
コースレート74.0/スロープレート137
設計/ロバート・ボン・ヘギー
開場/1972年
公式ホームページはこちら

現在の有馬ロイヤルゴルフクラブ

画像: ロイヤルコース18番(448Y・P4)1987年の日本オープンはロイヤルコースが舞台だった

ロイヤルコース18番(448Y・P4)1987年の日本オープンはロイヤルコースが舞台だった

画像: ノーブルコース2番(468Y・P4)

ノーブルコース2番(468Y・P4)

画像: 有馬ロイヤルGC クラブハウス

有馬ロイヤルGC クラブハウス

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