夏のゴルフ旅行で国内一番の行先と言えば「北海道」。全道で約170コースを擁し、都道府県別のゴルフ場数でもダントツのナンバー1。気候やコースコンディションの良さはもちろん、名設計家が手掛けたコースから、雄大な自然を生かしたコース、リンクスコースなど、個性的なコースが待っている。そのなかで、昭和の名匠・井上誠一が造ったコースは3つ。そのコースにフォーカスしてみた。
画像: 井上誠一(1908~1981) 東京GC朝霞コース設計のために来日したC・H・アリソンと出会い、コース設計家を志す。生涯で40以上のコースを設計しゴルフ界の発展に大きく貢献

井上誠一(1908~1981)
東京GC朝霞コース設計のために来日したC・H・アリソンと出会い、コース設計家を志す。生涯で40以上のコースを設計しゴルフ界の発展に大きく貢献

前期・中期・後期、井上誠一のキャリアを札幌近郊で追体験。

C・H・アリソンに影響を受け、コース設計を始めた井上誠一。彼が遺したコースは、元々の地形の 特色を上手く生かしながら、自然とコースの調和が図られ、個性のあるホールには上品さと優美さも 備わっている。だが同じ井上設計コースでも、経験の蓄積や造成技術の進化に伴い、時代ごとに変化がある。

まだ、重機がない時代の前期のものは、元の地形を最大活用することで、今でも色褪せないクラシックコースの趣が溢れている。

大型重機が登場した中期の作品は、元の地形を生かしながらも谷を埋め、土を盛り、池を造成したダイナミックなコースへと変化。また、スコットランドやアメリカの名コースへ視察行脚を重ねたのもこの時期だった。

そして後期はコース設計家の集大成として、女性的な曲線美、芸術的なセンスをを取り入れるようになる。

北海道の井上誠一設計は3コース。「札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コース」「室蘭ゴルフ倶楽部」「札幌ゴルフ倶楽部 由仁コース」は、実は設計された時期がすべて違う。そのため、それぞれ前期、中期、後期の特徴を持ち合わせている。

しかも、すべてが千歳・札幌近郊で、3日あれば各コースを存分に味わうことができる。設計家やコースレイアウトにこだわるゴルファーには最高のロケーションだ。

【井上誠一・前期】1958年開場
札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コース 地形を活かしたクラシック

画像: 輪厚コース17番(579Y・P5)ANAオープンでも有名な左ドッグレッグのパー5。林の上をうまく越せば2オン可能なドラマティックなホール

輪厚コース17番(579Y・P5)ANAオープンでも有名な左ドッグレッグのパー5。林の上をうまく越せば2オン可能なドラマティックなホール

画像: 輪厚コース14番(360Y・P4)2つの池を右ドッグレッグのコーナーに活かしたパー4。結果、距離は短いがティショットの狙いが難しくなっている

輪厚コース14番(360Y・P4)2つの池を右ドッグレッグのコーナーに活かしたパー4。結果、距離は短いがティショットの狙いが難しくなっている

北海道で初めて井上誠一が設計。当初は「札幌コース」だったが1962年に現在の「輪厚コース」に改称した。自然のゆるやかな起伏が攻略の大きなカギになり、ホールを取り囲む樹木がそれに拍車をかける。木の成長とともに、チャレンジング性の醍醐味が年々高まっている。

井上は17番ホールの曲がり角に立つ木について「この林の木々は今後も伐採しないように」と指示の言葉を残した。当初はメインとサブの2グリーンだったが、2006年、サブグリーンを撤去して、ベントの1グリーンコースとなっている。

札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コース
18H・7063Y・P72
北広島市輪厚77
TEL.011-376-2231
アクセス:新千歳空港から車で40分、札幌から30分
公式ホームページはこちら

【中期】1965年開場
室蘭ゴルフ倶楽部 大地を削り、盛り、ダイナミックに

画像: 室蘭GC7番(354Y・P4)短いが奥に速い小さなグリーンが特徴

室蘭GC7番(354Y・P4)短いが奥に速い小さなグリーンが特徴

画像: 室蘭GC11番(386Y・P4)左ドッグレッグのコーナーにバンカー。グリーンはわずかな砲台

室蘭GC11番(386Y・P4)左ドッグレッグのコーナーにバンカー。グリーンはわずかな砲台

画像: 室蘭GC15番(401Y・P4)室蘭岳を眺める美しいホール。井上は「このホールはバンカー付近の右サイドから攻めたくなるように造った」と話した。グリーンは上中下の3面構成

室蘭GC15番(401Y・P4)室蘭岳を眺める美しいホール。井上は「このホールはバンカー付近の右サイドから攻めたくなるように造った」と話した。グリーンは上中下の3面構成

1929年に「イタンキGC」としてスタートした室蘭GC。1965年に、室蘭湾を一望する柏の樹林が生えるゆるやかな丘陵地で再スタートするっべく、井上誠一が設計した。自然の地形と樹木をなるべく利用しているが、必要な部分は重機を使い、大がかりな造成も行った。

バンカーは通常の半分の34個、そのぶん1グリーンのアンジュレーションとフェアウェイの起伏にこだわったという。完成間近の室蘭について井上は「この白鳥コースの仕上がりには満足しています」と語った。

室蘭ゴルフ倶楽部 白鳥コース
18H・6825Y・P72
室蘭市崎守町293-1
TEL.0143-59-4641
アクセス:新千歳空港から車で約1時間、道央道・室蘭ICから約2分
公式ホームページはこちら

【後期】1974年開場
札幌ゴルフ倶楽部 由仁コース バランスの取れた造形美

画像: 由仁コース1番(407Y・P4)、フェアウェイの途中からAグリーン(正面)とBグリーン(右ドッグレッグ)で2ルートに分かれる

由仁コース1番(407Y・P4)、フェアウェイの途中からAグリーン(正面)とBグリーン(右ドッグレッグ)で2ルートに分かれる

画像: 室蘭コース9番(447Y・P4)

室蘭コース9番(447Y・P4)

女性を描いた絵画の曲線美をコース設計にも応用したという井上誠一。由仁コースのグリーンやフェアウェイ、バンカーには曲線の美しさが表れている。また、美の極致であり、18ホールの調和がとれている。由仁はベントの2グリーン、単純なメインとサブではなく、それぞれに戦略性を持たせているのも特徴。

バンカーの少ない室蘭に対して、由仁には98のバンカーがある。そのなかには鳥が羽ばたくような形や浮雲のような造形のものがある。

ANAオープンは1987年、1988年、1993年の3大会は由仁コースで開催した。

札幌ゴルフ倶楽部 由仁コース
18H・7031Y・P72
夕張郡由仁町光栄588
TEL.0123-83-2777
アクセス:新千歳空港から車で40分、札幌から約1時間
公式ホームページはこちら

ゴルフダイジェスト・ツアーセンターで、北の大地の井上誠一をラウンドしよう!

輪厚コースの記事はコチラ↓

室蘭白鳥コースの記事はコチラ↓

由仁コースの記事はコチラ↓

週刊GD2019年6月4日号より

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