高いトップから低いトップに変えて大躍進。2018PGAツアー王者 J・ローズのスウィング変遷
【低いトップは大型ヘッドとの相性もいい】
ギアの潮流に詳しい永井信宏プロに聞くと「大型ヘッドになって重心距離が長くなるとトウダウンが起きやすくなる。高いトップだとそれを助長する傾向があるため、低いトップが大型ヘッド向きとも言えます」。J・ローズも大型ヘッドをいち早く味方に付けての躍進とも言えそうだ
低いトップはいいことだらけです! by伊澤プロ
伊澤秀憲プロは、低いトップのメリットを「最短距離でボールを叩けるからです」と集約する。
伊澤 トップを低くするとアドレスから最短距離でクラブを上げることができるのです。パワーロスが起きにくいうえ、トップで力をしっかり溜めることができれば低いトップのほうがミート率が上がります。それはダウンスウィングも同様で、最短距離でクラブを下ろせるからこそ、溜めた力を効率よくボールに伝えることができます。具体的な利点を見ていきましょう。
【メリット①】クラブが手元の近くを通る
伊澤 腕が体から離れにくくなるのでパワーが逃げにくくなります。インパクトでは、体でボールを押し込めるようになるので、飛距離だけでなく方向性アップに繋がります。
【メリット②】インサイドからクラブが入る
伊澤 低いトップは腕と体が一体化して動きやすくクラブは自然とインサイドから入ります。ボールがナチュラルにつかまるので、強く重い球質にもなります。手先でクラブを動かさないから反復性が高く、実戦に強いスウィングだと考えています。
【メリット③】“遊び”がないからヘッド軌道が安定する
伊澤 メリット2とも連動しますが、体とクラブが一体化して動くことで、トップでの「ゆるみ」「遊び」がなくなります。無駄な動きが削ぎ落とされ、クラブの動きが安定します。結果、ミート率がアップし、平均的に飛距離が伸びるのです
【メリット④】シャフトのしなり戻りを使いやすい
伊澤 クラブがつねに体の正面にある状態でスウィングできるようになるので、振り遅れや手先でヘッドを走らせる動きがなくなります。体の正面からクラブが外れないことで、インパクトでシャフトのしなり戻りが起こり、効率のいいインパクトが実現できます
「低いトップ」と「小さいトップ」は別ものです! by伊澤プロ
── では、パワーの溜まった低いトップの作り方を教えてください。
伊澤 まずは始動です。ヘッドから動かさずに、手元から動かします。すると、その反動で自然にヘッドが動き出して、トップが低く収まります。もっともやってはいけないのが手先で上げること。形だけ低くしても意味がありません。
伊澤 正しい低いトップは「低くても深い」ということ。手先で低い形を作ろうとすると「浅い」トップになります。それを防ぐためにも手元から動かすことが重要になります。
ヘッドではなく手首から動かす。「重いものを動かすイメージです」
伊澤 体を使って上げない限り、トップは低くなりません。そのためには構え方が重要で、下半身を使う意識を持ってください。すると手元から動かしやすくなります。
すねにテンションをかけて立つと、上体の力みが消える
肩甲骨を「下げて」構える
伊澤 腕を強く締めると肩甲骨が上がって、肩の回転が損なわれます。結果、力みが発生し、手でクラブを持ち上げることになりゆるんだトップになります。
スプリットハンドで「ヘッドが前」の意識を強める
トップが低く収まっても、そこからどう動けば「ヘッドがボールまで最短距離」に動くのだろうか? 「ヘッドの動きがさらに良くなる方法があります」とレッスンを続けた。
伊澤 本来、トップが低くなると、その反動でダウンスウィングからシャフトは立って下りてくるのですが、「手が前に出る」とクラブが寝てしまいます。要するに、ボールに当てにいこうとする動きが入ると手が前に出て、クラブは寝やすくなります。
伊澤 そこで大事なのは「ヘッドが前になる」体遣いです。体の回転に対してヘッドはどうしても遅れるものですが、それを遅れさせないようにする。そのためにはスプリットハンドで素振りするのが効果的です。
左右の手を離す「スプリット」で振ってみよう
手で下ろさず、クラブが下りる「間」を生む
伊澤 トップが低い位置に収まると、その「反動」で今度は重力に沿ってクラブヘッドが下りようとします。この「反動」を利用するとヘッドが勝手に先行します。切り返しでは手で打ちにいかず、一瞬我慢して「間」をつくると「反動」が生まれます。
「歩きながら打ち」できるかな? 低いトップの点検
「クラブに重みがある以上、低いトップが自然なのは、実は当たり前です。自然な位置に上がっているかを体感するにはステップ打ちがいいですよ」と伊澤プロが続ける。
伊澤 少しボールから離れた位置で歩きながら素振りをして、そのまま打つ練習法です。意識が下半身にいくので上半身はリラックスした状態になります。
伊澤 球に当たらなくてもいいので、歩きながらクラブを振ってみると反動で振ることと、遠心力を感じられるはず。それが実はトップが低くなっている証拠なんです。みなさまもぜひ試してみてください。
伊澤プロのお手本スウィング
PHOTO/Shinji Osawa、TEXT/Masato Ideshima
週刊GD2018年11月6日号より