「アドレスでは関節にゆとりを持たせて構えることが大切」というのが前回の話。そして、テークバックヘと話が続<。「クラブを上げるとき、体重移動はさほど重要ではない」と湯原。体重移動と体の回転、軸のイメージの順にミスターべーシック湯原的テークバックを覗いてみた。今週の通勤GDは「迷ったとき、ユハラに帰れ」、その第9話。

前回第8話の話

【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。

【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。

GD 自然体のアドレスは、どのようにでも動き出せるための準備、というのが前回のお話でした。アドレスの次はテークバックですが、その始動にも諸説があって、迷っているゴルファーも少なくないと思います。

湯原 それは確かにありますね。例えば、頭を動かすなという教えを忠実に守ろうとすると、筋肉がガチガチになってしまうことがあります。アマチュアの方を見ていると、結構多いんですよ。

GD 自然体アドレスも、動き出しと同時に筋肉をこわばらせたら台無しになってしまうんですね。

体の回転と反対に頭を左に向けてテークバック。バランスがとれる

湯原 頭を動かさないことばかりに意識がいくと、首回りの筋肉が硬直してしまうんです。筋肉というものは体の各部分に連動していますから、首回りの筋肉が硬くなると、テークバックで体が右へ回るに連れて顔も一緒に動いてしまうんですよ。プレーヤーの意思に反してね。頭の位置をキープするには、筋肉を柔軟に保ち、むしろ顔を左ヘ向ける<らいの感覚でいいんです。

画像: 正しいトップの位置なら、クラブの重さが感じられ、さらにシャフトが指している方向やフェースの向きなども感じられるもの。ヘソの下の丹田を動かさずに上げる意識でテークバックしているという

正しいトップの位置なら、クラブの重さが感じられ、さらにシャフトが指している方向やフェースの向きなども感じられるもの。ヘソの下の丹田を動かさずに上げる意識でテークバックしているという

GD 体は右に回って、顔は逆に左を向くんですか。ちょっと難しい感じがします。

湯原 頭の位置をアドレス時のままにしておくのですから、体と反対の方向に動かしたほうが、バランスが取れてキープするのはラクなんですよ。そのとき、背骨を中心とした軸の意識さえあれば、それほど難しいことではありません。つまり、頭を動かすな、という言葉に必要以上にとらわれることはない。「自分がイメージする軸に対して回転できれば頭は動かない」ということなんです。

画像: 頭を左に向けてテークバック

頭を左に向けてテークバック

GD 軸の感覚を持てば、それだけで完璧なテークバックができるということですか。

ゴルフは回転のスポーツ。体重移動の誤解

湯原 軸の意識だけでは、完璧とまではいかないですけどね。巷のレッスンで「体重移動を大きく」ということが言われていますけど、それは誤解を生む教えです。軸をイメージする妨げになっていると思います。

GD 体重移動を大きくという教えはよく聞きます。移動が大きいほうがより大きなパワーを生むんじゃないですか。

湯原 いや、体重移動で生み出されるパワーは、それほど大きいものではありません。体重移動を否定するわけではないんですよ。でも、体重移動の距離はわずかなものですから、そこで生まれるパワーはほんの少しなんです。ゴルフは回転のスポーツです。体の回転で生まれるパワーのほうがはるかに大きいんです。だから、いかに体重移動するかを考えるより、体の回転を重視したほうが、大きなパワーを生みだせると考えています。

GD では、体重移動はむしろ考えないほうがいいと。

湯原 いや、考える必要はあります。ここで言いたいのは、体重移動を誤解しているゴルフアーが多いということなんです。アマチュアのなかには、テークバックで体重を右に乗せ、ダウンスウィングからインパクトで左に乗せたつもりなのに、体の軸が右、左とメトロノームのように揺れ動いてしまう人をよく見かけるんです。まさに誤解から生まれた動きです。それは、アドレスの前傾角度をキープして体を回転することで防げます。前にも言いましたが、腰というのは、体の構造上、ほとんどねじることができません。実際に回転するのは、肩甲骨とか、ヘソの上から肋骨にかけての部分など。そして、股関節を入れ替えることで体を回転させるのであって、決して腰を回すことではないんですよ。

画像: 湯原はへその下あたりに体のコアをイメージして前傾角度をキープし、そこを中心に回転していく。コアから遠い腕や足が大きく動くため体重移動も大きいように見えるが、コアはほとんど動かず、回転パワーで打っている

湯原はへその下あたりに体のコアをイメージして前傾角度をキープし、そこを中心に回転していく。コアから遠い腕や足が大きく動くため体重移動も大きいように見えるが、コアはほとんど動かず、回転パワーで打っている

GD 体重移動を誤解して体を動かそうとしているから、軸を忘れてしまうとも言えますね。

湯原 前傾角度を保って体を回せば、左肩は右肩より低い位置を通って回転し、手もクラブヘッドも自然と高い位置へ上がつていきます。自然と上がるわけだから、レッスンでよく聞く「テークバックの始動では30㌢真っすぐ引<」とかは、考えなくていいんです。細かいことは考えずに、とにかく自分の心地よいトップはここだ!というところに最終的にヘッドがあればいいんですよ。

回転運動には1軸がいい

GD しかし、アドレスでの前傾角度を保つのはなかなか難しいというのがアベレージゴルフアーの本音です。湯原プロは、どんなふうにアングルを保っているんですか。

湯原 私のイメージでは、丹田と呼ばれる部分、ヘソの下あたりに体のコアがあって、そこを中心に前傾角度が保たれ、ブーンと回っている感じなんです。ゴルフは回転運動です。確かに体重移動はしていて、テークバックで体が右に回転したときに右足に荷重され、ダウンスウィングに人って体が多少左ヘスライドしながら荷重は左足に移っていきます。しかし、中心になっているコアの部分は、ほとんど動かないのです。ただ、肩とか腕、足などのコアから遠い部分は大きく動<から、体重がものすごく大きく移動しているように見えるんです。実際はコアに付随して動いているだけなんですよ。

GD 湯原プロのおっしゃるコアを中心に考えると、軸のブレが少なくなるような気がしますね。そもそも、軸といっても1軸論もあれば、2軸論もありますよね。トップでは右足の軸で、ダウンからフィニッシュでは左足の軸に入れ替わるという。

画像: 軸はブレないことが大切。決まった形はなく、ブレなければ自分がイメージしやすいものでよい。湯原は、背骨よりも太い円柱形をイメージしている

軸はブレないことが大切。決まった形はなく、ブレなければ自分がイメージしやすいものでよい。湯原は、背骨よりも太い円柱形をイメージしている

湯原 私は軸は1本でなければスムーズな回転運動はできないと考えています。2軸にすることで体重移動を大きくしよういう考えなのでしょうが、さっきも言ったように、体重移動で生まれるパワーは、それほど大きくありません。むしろ、回転運動を妨げかねないのです。アドレスのときにお話ししたように、背骨はS字に湾曲しているものです。それを軸と解釈して回転するのは、実はとても難しいんですよ。体には厚みも幅もあるわけだし、バックスウィングよりもフォロースルーのほうが大きくなりますから、本当は単純に「背骨1= 軸」とイメージするのは無理があると思います。私の場合は、軸というよりも、もっと太い円柱型をイメージしているんです。ただし、これは私の感覚ですから、ここでは便宜的に背骨を軸として話をすすめていますが。

GD 軸のイメージは、人それぞれで違っていいものなのでしょうか?

湯原 軸がブレなければ違っていてもいいと思います。自分がイメージしやすいもの、それがその人のスタンダードですからね。

週刊GD2013年より

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画像: golfdigest-play.jp
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