9ホールに短縮された最終日、3日目までの貯金を生かして逃げ切るかに見えた尾崎直道だったが…。16番、直道のたった一発のミスショット、そのミスを待ち受ける青木功がチャージをかける。絵にかいたような大逆転となった。

【ゴルフコースの評価基準】
ゴルフコースを評価する「7つ」の項目がある。①ショットバリュー、②難易度、③デザイン・バランス、④ホールの印象、⑤景観の美しさ、⑥コンディション、⑦伝統・雰囲気。この7項目は米国ゴルフダイジェスト、ゴルフマガジンが発表するランキングの評価基準にもなっている。当コラム【伝説の名勝負。ヒーローの足跡】は、このコースでどのような「歴史」が作られ、「公式競技」を開催したかを掘り起こすことで、「伝統と雰囲気」をみるものです。

直道はなぜ4番アイアンを握ったのか…5番でも届いたのに…

画像: 直道を追う最終日の青木

直道を追う最終日の青木

3日目の夜から降りはじめた雨は、最終日に入っても降りやまず、朝8時15分「イン9ホールのみに競技を行う」旨を競技委員会は発表した。

最終日、9ホール。尾崎直道は「よし! チャンス」と思い、「9ホールじゃ追いきれない」と嫌な感じを青木功は抱いたという。

3日目を終って尾崎直道が12アンダー、青木が9アンダー、その差は3打。18ホールならば、試合の流れが変われば青木にチャンスは生まれる。が、9ホールでは直道がパープレーすれば、青木とてトップに並び、抜くことは容易ではない。まして、「3日目までの直道のゴルフは、崩れる要素は少ない」とも青木は考えていた。

1971年、プロ入り初勝利をこの関東プロで飾り、現在の青木を築く第一歩を踏み出した。青木にとって、このタイトルは自分の歴史ともいえた。72、74、78、79年の5回、このタイトルを掌中におさめ、関東第一人者から日本へ、そして世界へと飛躍していった。そして、今年。6度目のタイトルに、青木は執念を持った。

「勝とう」与えられたわずかなチャンス。それを精一杯戦い抜くところに青木のゴルフがある。そして…

10番(509メートル、パー5)

直道は8メートルのパットを沈め12アンダー。

画像: 直道の気迫溢れるプレー

直道の気迫溢れるプレー

11番(337メートル、パー4)青木は3パット、ボギー。2ホール目にして5打差。

青木功 これで終わったと一瞬思った。でもね、このコースでは1発ミスが出るとわからなくなる。特に、16、17、18番の3ホール、ここを無事に切り抜けられるかどうかが勝負。それまでは勝負を捨てられないと考え直した。

尾崎直道 早々に勝てたって気持ちもあったし、逆に5打差に開いても何かうまくいきすぎているという気が…。

早く来すぎた勝利の空気。直道の表情に余裕は生まれず勝利へのプレッシャー、勝つという重さがその時からかかってきた。

15番、左のラフからショート、寄らず入らずボギー。それでも3打差。

青木功 残り3ホール、ボギー、パー、ボギーという上がり方をされたら負けだった。それが…。

尾崎直道 大丈夫だろうか、本当に勝てるだろうか?

画像: 勝負師としての力の差を見せつけた青木

勝負師としての力の差を見せつけた青木

青木と尾崎直道の戦績をここで比較するまでもないだろう。経験、試合の流れの読み、そして勝利までの筋書きを脳裏に描きながら、それを実践する力、どれひとつをとってみても直道は青木に及ばない。

青木という影、偉大な影を常に後ろに背負う苦しみ、逃げ切ることの難しさ。「並ばれたら負け」という強迫観念が、3打差という数字よりも、より強く直道を襲っていた。

16番(192メートル、パー3)

謝敏男、青木功とも1オン、そして直道は4番アイアンを手にした。

尾崎直道 ひっかけまい、ひっかけまいとして逆に右肩が下がってしまい、左にひっかけてしまった。

青木功 あそこでなぜ4番を持ったのか。5番で十分とどく距離、たとえ乗らなくともグリーン手前からアプローチすればいい。それがたとえボギーでも…。

直道のショットはグリーン左の池に直接入り、ドロップ、3オン、青木にめぐってきたチャンス。そして、最後のチャンス。

画像: 直道のショットは痛恨の池

直道のショットは痛恨の池

青木の表情は変わった。追いつめた獲物を狙う目に、その目に光を帯びた。8メートル。狙い定めたように、ど真ん中から沈める。直道は外しダボ。一瞬にしてスコアが並ぶ。

17番(445メートル、パー5)

青木は1メートルを沈め、直道が1.2メートルを外す。逆転。勝負あった。追いつめられ、とらえられたものの反攻は弱々しい。

18番、1メートルを沈めればプレーオフというパットも、カップ左を通りすぎる。そして、青木は6度目のこのタイトルを掌中におさめた。

青木功 直道もいいリズムでゴルフをする。ゴルフが悪ければ悪いなりにまとめてくることができるようになった。肝心なところでリズムが早くなっていたけどね。それよりも、勝つためのつなぎがまだわからないみたいだ。自分と2位との差、そして、コースをどのように攻め守るか、18番をフィニッシュするか、それさえ身につけてくれば強くなる。

勝つためのつなぎ――数多く修羅場をくぐり抜けることに、それは血となり肉となる。そしてプレーに幅を持たせてくる。

関東プロチャンピオンの座を目前にしながら直道は敗れた。青木の影と自らの勝利への欲望、この2つが心に渦巻き、16番のミスに集約された。

画像1: 直道はなぜ4番アイアンを握ったのか…5番でも届いたのに…

青木は言う。

「若い人がどんどん伸びている。そして若い人がドンとぶつかってこれる自分に、目標となれる自分になりたい」

6度目の関東プロのタイトル。そこには、まだ若者に王座を明けわたせないという青木の自負が見えた。

画像2: 直道はなぜ4番アイアンを握ったのか…5番でも届いたのに…

(週刊ゴルフダイジェスト1983年7月20日号)

【1983年関東プロ最終結果】
伊香保国際CC/6299メートル/パー72
1位 ‐10  青木功(日本電建)
2位  ‐9  尾崎直道(日東興業)
3位  ‐7  謝敏男(鳳凰)
4位  ‐6  海老原清治(翠華楼)
4位  ‐6  新井規矩雄(アデランス)
6位  ‐5  上原宏一(札幌グリーンヒル)
6位  ‐5  矢部昭(アリガゴルフ)
6位  ‐5  泉川ピート(フリー)
6位  ‐5  横島由一(JUN)

伊香保国際カンツリークラブ
群馬県渋川市川島2470‐8
TEL 0279‐22‐1270
榛名/3343ヤード/パー36
伊香保/2740ヤード/パー35
赤城/3487ヤード/パー36
コースレート71.5/スロープレート127(榛名・赤城)
コースタイプ/丘陵コース
グリーン/ベントの2グリーン
設計/小林光昭
練習場/35ヤード
宿泊施設/15室38名
加盟連盟/JGA、KGA
会員権/預託金制で譲渡可
開場/1961年
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