那須GCはよく軽井沢GCと比較される。ともに1000㍍級の高原というだけではない。軽井沢GCの創立メンバーは東京GCの会員が中心。那須GCは霞ヶ関CCの会員が多く、戦前は、〝霞ヶ関CCの夏の別荘〟といわれた。霞ヶ関CCのプロは夏の間、那須に出かけ、冬は那須の名物プロ小針春芳が霞ヶ関CCで練習した。

ゴルフコースことはじめ
文芸評論家を経て、ゴルフジャーナリストとしても活躍した田野辺薫氏。ゴルフコースの目利きとして全国のコースを取材し、週刊ゴルフダイジェストで「ゴルフの歴史を歩こう」を連載(2005~2013年)。それを一冊にまとめた「美しい日本のゴルフコース」から多くの人に名コース誕生の歴史を知ってもらおうと再編集公開しています。

那須高原の開発は、大正15年の御用邸開設に始まる。那須にもゴルフ場を造ろうとなったのが昭和8年、それを手助けしたのは霞ヶ関CCを設計した藤田欽哉だった。

そして開場、昭和11年7月。

藤田欽哉との共同設計になっているが、事実上は井上誠一のソロデザイン第1号である。

画像: 10番ホール/402㍎/パー5 距離は短いので2オン可能な打ち上げホール。グリーンは奥から速い

10番ホール/402㍎/パー5 距離は短いので2オン可能な打ち上げホール。グリーンは奥から速い

高低差の大きい20万坪の山野をモッコとツルハシだけで、上から始めて余った土量を下へ落す方法で進めた。約30㍍を打ち下ろす16番220ヤードパー3の名物ホールはその名残だ。那須GCを愛した作家獅子文六は書いている。

「ゴルフだけならどこでもやれる。泊りがけでこの山奥にやってくるのは、クラブライフを楽しみたいからだ」。

那須GCのおかしさは、コースが出来る前にクラブハウスとロッジを、昭和10年7月に造ってしまっていることだ。ゴルフよりゴルフライフである。

画像: 5番ホール/540㍎/パー5 2打目までは緩やかに打ち上げていくが、3打目は急激な打ち上げになる。グリーン手前の大きなマウンドが距離感を惑わす

5番ホール/540㍎/パー5 2打目までは緩やかに打ち上げていくが、3打目は急激な打ち上げになる。グリーン手前の大きなマウンドが距離感を惑わす

自然が人を虜にするコース

戦前は、ゴルフをしない奥さんたちも家族会員になってクラブハウスでお喋りを楽しんだ。今でもメンバーラウンジは夜10時まで賑わう。夏には、1番ホールと9番ホールの間で、メンバーの子ども達の運動会を開いた記録もある。

那須五岳を見晴るかす視界の大きさ、春は山ツツジ、ゴヨウツツジのこぼれる花影、秋は全山が紅葉を着る。自然が人を虜にするコース、その点では軽井沢に勝る。コース設計は、藤田欽哉と井上誠
一の共作となっているが、事実は井上誠一のソロデザイン第一作である。後に会長となる安田一がそう語っている。

【那須ゴルフ倶楽部】
開場日/昭和11年7月5日
コース/18H/6548Y/P72
設計/藤田欽哉、井上誠一
栃木県那須郡那須町大字湯本212 ☎0287-76-3100

取材・文/田野辺薫

美しい日本のゴルフコースより(弊社刊)

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